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学園での噂 …4
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次にアルフレッドとレオンがアリーナに出てきた時、会場は大いに盛り上がった。
アルフレッド様!レオン様!と、令嬢らしからぬ声援が飛んでいる。
アルフレッドの人気を肌で感じて、ルシエルは複雑な気分になった。
「まさか、アルフレッド様とレオン様が当たるなんて…」
二人の対決と知って、ミシェルは辛そうな声を出した。
応援している二人が当たるのは、ルシエルも複雑な気分だった。
結果はアルフレッドの圧勝だった。
ルシエルは惜しみなく拍手を送る。
ゲームにはなかったアルフレッドの戦う姿に、目を奪われて仕方がなかった。
二次元よりも三次元がの方がカッコいいなんて事あるだろうか?とルシエルは考えた。
勝ったアルフレッドは、観客席を仰ぎ見る。
ルシエルは、アルフレッドと再び目が合った気がした。
アルフレッドが顔を上げたのは束の間で、すぐに目線を下げて控え席に戻ったが、ルシエルはアルフレッドから目が離せなかった。
ミシェルの事を見ていると分かっていても、どうしても気になってしまう。
会わなければ育たない想いが、目にしてしまうとどうしても意に反して育ってしまっていた。
(ダメ!……ダメダメ!!)
これ以上、意識を持っていかれないように、とルシエルはかぶりを振る。
「ルゥ?どうしたの?」
そんなルシエルにミシェルが気付いた。
「えっ?!あ、ううん。なんでもないよ」
それからルシエルは、アルフレッドの方でなく、アリーナの戦いだけを必死に見つめた。
頭に浮かびそうになる想いを無視するように。
そして、ついにトーナメントの決勝戦が始まる。
アルフレッドと、その対戦者がアリーナに出て来た。
ミシェル情報により、その対戦者が王宮騎士団長の次男である事をルシエルは知った。
王宮騎士団長と言えば、その長男はゲームの攻略者の一人である。
次男はどうやらアルフレッドと同じ学年であるらしい。
その次男はゲームには登場しないが、まさかこんなところでもゲームを意識することになるとは、ルシエルは気分が沈んだ。
いくらゲームの世界に転生したからと言って、自分はこうして意志を持って生きていて、ゲームなんて馬鹿げたことだと思う事がある。
しかし、こうして自分が知るゲームの内容が垣間見えると、この世界はやはり作られたものなのだろうかと考えてしまうのだ。
ミシェルを変えると奮闘しているが、それは功を奏しているのだろうか。
ミシェルとアルフレッドの関係はどうなっているのか。
考えても答えの出ない、堂々巡りの問題ばかりだ。
ルシエルがそんな思いに気を取られているうちに、試合は佳境に入っていた。
激闘の末、勝利したのは王宮騎士団長の次男だった。
しかし、ほぼ互角だったその試合に、会場からは惜しみ無い拍手が送られる。
ルシエルも必死で拍手を送る。
そして、またいつ見れるか分からないアルフレッドを見つめた。
こんな機会でもなければ、こんな風に見つめることは叶わないだろうと思いつつ。
模擬戦の終了が宣言されたアリーナには、其々を讃えるべく、観客が押し寄せた。
それを見て、ミシェルが席を立つ。
「私たちも行きましょう?」
「えっ?」
「ご挨拶に行くのよ。このまま帰れないでしょう?」
「えっ?ちょっ!」
一人でサッサと行ってしまうミシェルに、どうしようかと迷いつつも、ルシエルはついて行くしかなかった。
アリーナに降りると、ミシェルは目的の人物を探して辺りをキョロキョロする。
「アルフレッド様には…近寄れそうに無いわね」
ルシエルがミシェルの目線を合わせ追うと、令嬢に囲まれたアルフレッドが見えた。
嬉しそうに女達を相手するアルフレッドに、胸がツキンと痛んだ。
「じゃあ、先にレオン様に挨拶しましょ。……ルゥ。ルシエル?」
「え?あ、あぁ、うん」
つい、アルフレッドに見惚れてしまっていた自分を心の中で殴って、ルシエルはミシェルについて行った。
その先には、アルフレッド程ではないが女に囲まれたレオンがいた。
その集団にミシェルが近付くと、それに気付いたレオンが周りに声をかけながら二人に近付いた。
さり気無く女達をかわしてこちらに来るレオンの手腕に、ルシエルは感心した。
「ミシェル様、ルシエル様も来てくださったのですね」
先ほど、女達をあしらっていた冷めた顔とは違う、親しみのある笑顔でレオンがそう言った。
「えぇ。その、残念でしたわ。アルフレッド様と当たるなんて」
「そうですね。でも、このトーナメント戦に出れただけで、奇跡のようなものなのです。殿下のお側にいる者としては、まだまだです」
「そんな事ありませんわ。素晴らしい戦い方でしたわ。なにより、レオン様はペンでは誰にも負けませんでしょう?ペンは剣より強し、と申しますわ。アルフレッド様もレオン様のように文武両道の方がお側に居られて、心強いでしょう」
「ふふ。ミシェル様にそう言って頂けるとは。ご期待に応えられるよう、さらに精進しなければなりませんね」
そう言って笑い合う二人のやりとりを見て、いつの間にこの二人はこんなに仲良くなったのだろうとルシエルは思った。
自分が行ってないランチの時だろうか。それとも、それ以外に自分の知らない何かがあるのか。
なんにせよ、レオンとこれだけ親しくなっているとすれば、アルフレッドとは当然もっと親しくなっているはずだとルシエルは思った。
(あ、れ?)
その自分の考えに、ルシエルは胸が痛むのを感じた。
なぜ胸が痛むのだ。
ミシェルとアルフレッドが仲良くしてくれるのは良いことではないか。
(きっと、変な噂なんて聞いたから、アルフレッド様に対して偏見が生まれちゃってるんだ)
ルシエルはそう結論付けた。
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