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それぞれの思い …7
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冬休み、一日目。
裏庭のバラの剪定をしながら、ルシエルは溜息を吐いていた。
側から見れば、真面目な事を考えている様子である。
しかしルシエルの脳内は、その顔とは裏腹に花畑だった。
(アルフレッド様のアノ声……可愛かったな)
まさかの、エロ反芻である。
脱いで初めて分かる、アルフレッド様の逞しい身体。
滑らかな肌、柔らかい唇、彫刻のような雄の象徴。
それらの様子や手触りを思い出して、ルシエルは身震いした。
ズクン、と下半身が疼く。
(俺、やっぱ、ただのアホだわ。エロい事しか考えらんねぇ。……けど、前世より満たされてる。それは、アルフレッド様が俺のことを愛してくれてるからで……あぁ、次はいつ、会えるかな……)
前世の自分と意識を混濁させながら、ルシエルはそんな事を考え、バラの枝にハサミを入れる。
今回の休みは年末年始を挟むため、王太子のアルフレッドは公務で忙しく、なかなか会う事は叶いそうになかった。
快楽を覚えた後、また前世のように自慰に溺れるのではないかとルシエルは怯えていた。
しかし、時折性欲がやって来るものの、前世のようにそれに溺れる事はなかった。
それは何より、アルフレッドという存在のおかげである。
自分で虚しい自慰をしなくても、アルフレッドと会えば快楽を与えてくれるのだ。
パチン、パチン、とルシエルは手を動かして、ふとその動きを止める。
(でも、アルフレッド様は……なんで僕に挿れてくれないんだろう)
ルシエルの目下の悩みは、それだった。
何度か身体を合わせた。
が、どれもお互いにイかせ合っただけである。
ルシエルは、いつでも受け入れる準備は出来ているので、毎回肩透かしを食らったような気持ちになっていた。
もちろん、愛されている事は自覚している。
しかし、やはり物足りないのだ。
「僕に、魅力がない、のかな?」
そうして再び、パチンとハサミを入れた。
「ふふ、なーにを悩んでるかと思えば」
「!!」
突然、後ろから声がして、ルシエルは肩を跳ねさせた。
「ミィか……!ビックリさせないでよ」
「あら、ごめんなさい。でも、ルゥが思い詰めた顔してるのが見えたから、気になって」
ミシェルはそう言ってペロと舌を出してみせた。
「それにしても……アルフレッド様の事で悩んでたの?」
「うっ、いや、その……」
考えていた事がコトだけに、ルシエルは目線を泳がせた。
「ルゥは自分に魅力が無いなんて思ってるの?まさか、アルフレッド様からの愛を信じられないと?」
「そ、そう言う訳じゃ、ないけど……」
「じゃあ、なーに?ルゥはとても魅力的だと思うけど?」
首を傾げてルシエルを見つめるミシェルは、最近綺麗になった。
まさに恋のなせる技なのだろうと、ルシエルは考えた。
ふと、ハサミを持つ自分の手が目に入る。
ミシェルの柔らかそうな白くて細い手と比べると、自分の手はいささか骨張っていて、男女の違いを感じさせる。
「いや。……だって、僕、やっぱり男だし……」
自分でそう言いながら、ルシエルは傷ついた。
そうだ、自分は男だ。
だからアルフレッドに抱かれないのだと。
自分はアルフレッドに挿れてほしいと思っているが、女を知っているアルフレッドが、ワザワザ男のケツに挿れたいと思うだろうか、と考えた。
答えは、否だ。
そんな事を考えていると、ミシェルが「はぁ?」と、淑女らしからぬ声を飛ばした。
「そんなの、最初から分かってる事じゃない。アルフレッド様が性別なんて気にしていないことは、一目瞭然よ?ルシエルだから、好きなのよ?男とか関係ない」
ミシェルはフンと鼻を鳴らしたが、ルシエルは曖昧に微笑むだけだった。
その様子に、ミシェルはハッとなる。
ルシエルが悩んでいるのは、自分が「男」だからである。
男同士で困る事、それは……
「ルゥ、もしかして、赤ちゃん欲しい、の?」
「え?……えええっ!違っ、そう言う事じゃなくて!……それ以前の……って!いや!違う!違うよ⁈とにかく、気にしないでっ!」
ミシェルの当たらずとも遠からずな疑問に、ルシエルは慌てた。
「それ以前⁈ま、まさか。その……それ以前の、問題?」
ミシェルが、顔を見て真っ赤にしてモジモジしながら言った。
「えっ、あのっ」
「そ、そうよね。男同士って……何したらいいか、その、困るわよね。普通、知らないわよね」
「えっ?いや……えっ?」
ミシェルの赤面につられて、ルシエルも顔を赤くした。
ミシェルが考えている事が何となく伝わってきて、ルシエルは動揺した。
その動揺を、ミシェルは肯定と受け取った。
「うん。分かったわ。ええと……、そ、そうだっ!私、お友達にちょっとツテがあって……その、えっと、その……いつになるか分からないけど、その、方法、とか、書いた本、を、見つけてくるわねっ」
ミシェルは一気にまくし立てた後、真っ赤な顔のまま走り去った。
「ちょっ、ミシェル⁈……はぁ。……方法?本って?」
ルシエルはミシェルがやろうとしている事を理解して、恥ずかしさでその場にしゃがみ込んだ。
「方法なら、知ってるんだよ……」
今さら本を渡されたところで、かなり恥ずかしいし、ますますモヤモヤするだけだろう。
そこでルシエルは、先程のミシェルの言葉を思い出した。
(普通、知らない……?)
ルシエルは雷で打たれたような気分になった。
ルシエルの持つ男同士のセックスの知識は、前世で得たものだ。
今世ではそのような物にお目にかかったことがない。
探せばあるのだろうが、前世のようにネットで検索するだけで、誰にも知られずに知識を得られる世ではない。
(アルフレッド様は、知らない、のかも)
アルフレッドは男同士の……アナルを使うセックスを知らないのかもしれない。
ルシエルは頭を抱えた。
自ら知識をひけらかして、好き者とは思われたくない。
かと言って、アルフレッドが男同士のセックスの仕方を誰かに聞くなんて考えられない。
「うーー……」
ルシエルは頭を抱えて悶々とするのであった。
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