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鈴がくれるもの
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ずっと抱きしめられていると、落ち着いてきた
鈴は今まで何度、こんな俺と真剣に向き合って受け止めてくれただろう
振り返ってみても、鈴は俺にくらくらする程優しいことしかしていない
食事にしても、睡眠にしても、会話にしても。
放っておけば、そのうち食べる。
時間が経てば、意識を失う。
話さなくても、死にはしない。
今までそうだった。
それが当たり前で、その生活に文句もなかった
それなのに鈴は全く違った。
「これくらいなら食べられそう?」
「結が寝なきゃ俺も寝ない」
「何考えてるのー?」
最初は放っておいてほしいと思ったけれど、段々と鈴に声をかけられることが嬉しいと思う自分がいた
自分の変化に気付かざる終えない段階まで来ていた。
もしかしたら鈴の言っていることは本当なのかもしれない。
そして、俺の考えが間違っているのかもしれない
本当に「好き」とか、自分のためじゃなくて相手の為にある想いなんてものがあるのかもしれない
俺だって、1番最初に付き合った人のことは信じていた。
好きではなかったかもしれないけれど、信じようとしていた。
「離さない」とか「好き」とか毎日のように言われて、本当にこの人は俺のことを離さないでいてくれるのかもしれないとか、変な期待もしていた
そんなことあるわけ無いのに。
毎日のように強いられる性行為。
日に日に後ろの痛みが増していって、酷いときは何もしていなくても鈍く痛んでいた
そんなある日の夜、睡眠中に魘されてしまって、目が覚めてからも中々落ち着かなかった
その事が原因で別れた。それだけの些細なことで。
俺は痛くても受け入れてきたし、弱音一つ吐かなかったのに。
なのにあいつは、俺が魘された。ただそれだけの事で離れていった
でもそんなものなのだと、気づかせてもらえた。
次に付き合った人、その次に付き合った人。どちらも俺の考えを確信に変えていっただけだった
結局は自分のため。
そして、その犠牲になる人が必要ってこと。
自分は何かを壊されたわけでもないので犠牲とまでは言わないけれど、そういう人たちはたくさんいると思う
街を歩いているだけでも、それは明白だった
そんな人たちと鈴を同じにすることは失礼なんじゃないか
というか、したくない。
その枠ではなくて、鈴として、向き合いたい
けどそれは怖い。
信じれば信じるほど、それが違ったときの衝撃は大きい
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