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その後もいくつかのアトラクションを楽しんでいたが、俺は真島と目を合わせなかった。
というか見たくない。
あいつ絶対へこんでるし、辛気臭い顔見たらこっちまで気分下がる。
「おい。お前奏志に何言ったんだよ」
気にしないようにしていたが、こっそり貞男に小突かれた。
女の子達は気付いていない反応だったが、親しい友人には分かるということか。
さすが保護者。
「…別に俺と真島が仲悪いほうが、お前には好都合だろ。ほっとけ」
「奏志がへこんでるのに好都合なわけあるか。なんだかわかんねーけどテメエ早く謝れよ」
「はあ?なんで俺が」
空気読めない真島が悪いんだろうが。
なんで突き放した俺が謝らなきゃいけねーんだ。
俺の反応に貞男はチッと一つ舌打ちをする。
「お前しか奏志の機嫌直せないからに決まってんだろ」
どこか悔しげにそう言った貞男は、前を歩く真島に視線を向ける。
つられて見れば、その背中はリストラを宣告されたサラリーマンのように覇気がない。
確かに俺が真島を許してやらない限り、あいつが鬱陶しいほど落ち込み続けるのは目に見えている。
いつだって俺の機嫌を取ろうと真島は必死だった。
突き放した時の世界滅亡みたいな表情を思い出すと、気が引けてくる。
いやでもちょっとまて。
「じゃあ俺の機嫌は誰が直してくれるんだよ」
聞いたが、貞男は無言だった。
なんか言えや。
「…やばい。なんか世界が回って見える」
「だ、大丈夫?ユキ」
ついに完全なるグロッキー状態になった貞男を、ベンチで真島が介抱する。
なんでも苦手なことは克服したいという謎の使命感に駆られたらしい貞男は、その後も俺達にしっかりと付き合っていた。
こいつ頑張るところ明らかに間違ってるだろ。
ちなみに女の子たちは今買い物に勤しんでいるらしく、目の前の店舗で楽しげにはしゃいでいる。
そろそろ良い時間だし、あとはお土産買ってパレード見て帰ろうか、なんてところだ。
なんだかさっきから、ちらちらと俺の様子を伺ってくる真島を視界の端に感じる。
時間が経ったら俺もそこまで怒ることでもなかったな、なんて思い始めて来たし、そろそろ普通に接してやるか。
「あ、あの。た…高瀬くん」
そう思ったところで、勇気が出たらしい真島が俺に声をかけてきた。
視線を合わせたら、真島は泣きそうな顔で一度押し黙る。
ああくそ。もう分かったから。
許してやるからさっさと言え。
そんな捨てないで、みたいな切羽詰まった視線を寄越すな。
「あ…あの。さっきの――」
「高瀬くん、ちょっといい?」
不意に名前を呼ばれて、俺は顔を向ける。
ちょいちょいと女の子二人が俺に手招きをしていた。
真島か女の子かと言われたら、それは当然女の子だろう。
さくっとそちらに歩みを進める。
「なに?お土産買えた?」
「うん。買えたよ。待っててくれてありがとね」
「ああ、気にしないでいいよ。せっかく来たしな」
ニコリと笑いかけたら、二人共可愛らしい笑顔で返してくれる。
やっぱ女の子っていいな。最高かよ。
「あれ、そういや亜美ちゃんは?」
そういやさっきから姿が見えない。
店の方に目をやったが、それらしき姿は見えなかった。
「えーっと、あのね。実は…」
二人はどこか悪戯な表情で顔を見合わせた。
それからクスクスと楽しげに笑う。
「亜美に真島くんと、パレード二人で見させてあげたいなって思って」
「だからさ、高瀬くん協力してくれないかな。亜美迷っちゃったから、とか言ってうまく真島くんと二人きりにさせられたら…って」
ああ、なるほど。
それで亜美ちゃんは一人で違う場所ですでに待機していると。
二人の女子にそう言われたが、正直どこか気が乗らなかった。
ぶっちゃけ面倒くさいというか、俺と真島が今こんな状況なのに、いきなり亜美ちゃん探しに行けとかどんな会話の振り方だ。
とはいえその気まずさを知っているのは俺達二人だけであって、女の子たちはそんなことを知る由もない。
「ね、お願い」
そして上目遣いで頼む女の子の視線に勝てるほど、俺の心は強くない。
「…あー、分かったよ。亜美ちゃんのところに向かわせればいいんだな」
仕方なく折れたら、二人共嬉しそうに盛り上がった。
さて、真島になんて言おう。
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