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その後周りの席の奴らと騒ぎながら、現地へと向かった。
新幹線でものの数時間でそこまで到着すると、あっという間にもう景色は違った。
とはいえ修学旅行じゃ格好も制服だし、いつも見ている奴らへの新鮮味はないんだが。
一日目は特に自由行動があるわけでもなく、決められた寺や公園を巡ってホテルへ向かうという流れだった。
特進科とはどうやら周るところが別らしく、真島の姿は朝から見ていない。
が、しょっちゅうメッセが飛んでくる。
自分が見て感動したものは俺にも見せたいのか、写真がやたら飛んでくる。
恐らく今アイツは、はしゃいでいるらしい。
いい加減スマホの振動が鬱陶しくなったので、とりあえずメッセの画面を開いて、一気に下までスクロール。
それから『スマホ禁止』とメッセを送り返しておいた。
そんなスマホばっかりいじってたら、アイツだってまともに見学出来ねーだろ。
「なに、また塩対応してんの」
ぽいとスマホを鞄に放り投げた俺に、ヒビヤンがニヤリと含み笑いをする。
さっきから引っ切り無しにスマホが振動してたから、なにか察したらしい。
「ほっとけ。それよりヒビヤンこそあれ以来彼女とはマジで終わったのかよ?」
「んー」
いまいち歯切れの悪い返事だった。
何かあったんだろうか。
綺麗に整備された教科書にもよく出てくる寺を、ヒビヤンと並んで歩きながらボケっと見て回る。
見慣れない和の雰囲気一色の景色は、どこもかしこも趣があって京都だなーと語彙力の乏しい頭で漠然と思う。
「あ、もしかして面倒くせーことになってる?」
「んー」
「なに。もっとマシな反応しろよ」
「だってお前色々と下手くそじゃん」
うっと息を詰まらせる。
まあ俺に恋愛相談しろと言う方が確かに間違いだった。
なら余計なことはやっぱり聞かないでおこう。
フイとヒビヤンから顔を背けて、対して興味もない館内の文献に目を通す。
なんだろう。なんか微妙な気持ちだ。
「なに。拗ねた?」
「は?そんなわけねーだろ」
「頼ってもらえないのサミシーみたいな顔してたから」
「ぶん殴るぞ」
イラッとして目を細めたら、ヒビヤンは悪い悪いと冗談めかしく笑って俺の機嫌を取る。
「ま、もし聞いてほしくなったら、そのときはお前に相談するわ」
「…おー」
「返事は何も期待してねーけどな」
「そこは期待しろよ」
というか俺らは京都に来たのに結局いつもの日常会話しかしていない。
もっと寺や神社についての、なんかちょっと頭良さげな会話の一つでも誰か振ってこいよ。
とはいえ俺の周りにそんな秀逸な奴がいるはずもなく、というか振られたところで返せる知識もない。
結局俺達は一日目をグダグダ全体行動で観光しながら、宿泊するホテルへと辿り着いた。
二日目と三日目は班行動だが自由に動き回れるし、真島を誘うならそのどちらかだろう。
なんてつい真島の事を思い出してしまう辺り、俺も大分アイツ主体になってきてしまっているなとは思う。
じわりと緩む気持ちはどことなく高揚感もあって、たぶん俺も少しはこの見慣れない土地にはしゃいでいたんだと思う。
だが修学旅行一日目の夜。
まさかあんな事になってしまうなんて、俺はまだ考えもしていなかった。
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