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わいわいと賑やかにカラオケで過ごす。
今更女子を口説く目的もないからあの頃に比べれば少し味気ない気もするが、それでも家で一人でいるよりは全然マシだった。
考えてみれば真島と付き合う前はこうやって時間を潰していたんだよな。
この一年間は真島が俺を構い倒してくれたおかげで、真島と付き合う前のことなんかすっかり忘れてしまっていた。
「うめのん、次何歌うー?」
「じゃあこれかな」
「おー、選曲いいー!」
盛り上がりそうな夏歌を選んで歌って、男女みんなでバカ騒ぎする。
なんか夏休みの高校生っぽい。
いやまさに高校生なんだが、真島は真面目な奴だからアイツといるとこういう事は絶対にない。
というか俺もだがコイツらも受験生もしくは就活中の身だと思うが、完全に夏休みを満喫しまくっている。
別にいいところの学校狙っているわけでもなければ、本来夏休みなんてまだこんなモンなんだよな。
「うめのんて彼女いるの?」
「え?いるよ」
女子からの恋人確認は80%の確率で脈アリという勝手な持論を持つ俺は、間髪いれずにそう返す。
付き合う気ないだけに面倒なことにはなりたくない。
「あ、そうなんだ。こんなとこ来てて怒られないの?」
「怒らねーよ。それにアイツ今合宿中だし」
「合宿って部活?」
「勉強」
「えっ、頭いい子なんだね。うめのんの彼女なのに意外ー」
だよな。
俺もそう思う。
「どんな子なの?可愛い?」
「可愛いよ。犬みたいに懐いてくる奴」
「なにそれ。ねえ、なんかノロケられたんだけどー」
ふふ、と笑って女子がみんなに囃し立てる。
きっとコイツらの中でそれは可愛い女子像ができてるんだろうなと、内心ニヤついてしまう。
まさか俺より図体がデカイ男で、巷のアイドルだとは思いもしないだろう。
なんて呑気にそう考える俺は、ずいぶん男と付き合っている事に抵抗が無くなってきたなと思う。
いや男、というより相手が真島だからだろうか。
そんなことを思いながらふと気付く。
なんでまた俺はアイツのことを考えてるんだ。
気を紛らわせるためにここに来ているというのに、余計に虚しさを募らせてどうする。
会いたい気持ちだけが、どんどん蓄積するように膨らんでいく。
それから数日の間、俺は就活をしたり免許講習行ったりバイトをしたりして、夜は適当に友達と遊ぶ生活を繰り返していた。
『あ…あの、今日も遊びに行くの?』
「おー。これから行ってくる」
『あ、危ないよ。夜あまり出歩かないほうがいいんじゃないかな』
「あのな、俺男だぞ?可愛いとか言うのはお前だけだし、余計な心配すんな」
あ、あと七海もいたな。
目腐ってるコンビ。
遊びに行っていることはもちろん真島にも話していて、毎回心配そうな言葉が返ってくる。
別に同じメンバーだし、もう合コンてわけでもなければ浮気するつもりもない。
そもそも浮気するくらいならそっち本命でいいしな。
真島は相変わらず過保護に心配してくるが、暇なんだからしょうがない。
なによりエアコンが壊れてるのが一番悪い。
「じゃあまたな」
『あ…待ってっ』
相変わらず切ろうとすると必ず引き止めてくれる。
今日も好きだと言ってくれるんだろうか。
当たり前に愛情を与えられることに慣れてしまって、自然と真島の言葉を求めるように心が疼いてしまう。
『た…高瀬くん』
「うん、なに」
『あの…』
真島は少し言い淀んでいるようだった。
それでようやくいつもと違う雰囲気に俺も気付く。
電話だと顔が見えないせいで、アイツが何を考えているのか読めない。
『…ごめん。なんでもないよ。気をつけて行ってきてね』
「え?おー…」
そのまま電話は切れてしまった。
なんだか気持ちの悪い終わり方をされた気がして、虚しい気持ちと一緒にモヤモヤとしたものが胸中に残る。
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