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真島が一週間の合宿中に年越しはあっさり終え、1月になる。
どんなに忙しくても毎日寝る前に必ず真島は電話をくれて、たった数分間の言葉を交わす。
ヒビヤンの言葉は真島のことからヒビヤン自身のことまで大いに俺の動揺を生んでいたが、それでも冬休みが終わり始業式がくればあっという間にいつもの俺達だった。
特進科は受験の都合で学校には決められた登校日だけくればいいらしく、真島はもう学校にきていない。
いよいよ高校生活も終わりに近付いていく。
普通科の俺だって来月からは家庭研修期間で、数日の登校日はあるがあとは卒業式だけだ。
真島に付けてもらったキスマークがまた薄くなってきていたが、今はもちろんだが会うことも自分からメッセを送ることもしなかった。
真島の受験さえ終われば、という気持ちはあったが、受験が終わればすぐに卒業式だ。
それなら日にちが経っていくより、会えなくても真島とまだ繋がっていられる今のほうが全然苦しくなかった。
「え、明日?センター試験前日じゃねーの」
『うん。でも登校日なんだ。説明があるらしくて。…その、午前中で帰っちゃうんだけど少しでも会えないかな』
「俺は学校にいるから大丈夫だけど。あ、弁当作ってくんなよ?」
『えっ、ダメかな。久しぶりに作ろうと思ったんだけど…』
「絶対ダメだ。今は頼むから自分のために時間使ってくれ」
『ふふ、俺はずっと自分のために時間使ってるんだけどな』
真島は上機嫌だった。
もっと勉強がつらいと、俺に愚痴ったって八つ当たりしてきたって構わないのに、そんな事は一度もしなかった。
数分間の通話を終えて、余韻に浸るように息を吐き出す。
真島の声が耳に残っていて、心臓がドキドキと苦しい。
明日、真島に会える。
大事な日の前日だし、きっと会えても時間はすごく短いだろう。
それでも俺は全身が熱くなるほど嬉しくて、やめろと猫パンチかましてくる猫をぎゅうぎゅう抱きしめていた。
「――高瀬くん!」
4限を終えて移動教室から戻ってきたら、飛び跳ねる勢いで真島が俺の元へ走ってきた。
廊下だというのに今にも抱き締めそうな両手が伸びてきたが、既の所で思いとどまる。
「あ、危なかった…っ。抱きしめるところだった…っ」
セーフだと思ってるらしいが、残念ながら口に出てる。
隣りにいたヒビヤンがクククと堪えながら笑いだす。
じとりと横目で睨むと、スマンスマンとヒビヤンは謝りながら俺の横を通り過ぎていった。
なんだかこんな光景も久しぶりだ。
「お前もう学校終わり?」
「うん。今説明会終わったところだよ。その、少しだけ時間いいかな。あ、お昼食べてからでいいから」
「いや昼飯はいいよ。パン買ってあるから後で食えるし。それよりお前時間ないんだろ」
さっさと行こうと、屋上へ促す。
真島は嬉しそうについてきた。
屋上についた俺達はどちらからともなくすぐ抱き合って、キスをした。
本当に時間がなくて、言葉を交わすのも惜しかった。
ここがどこだとか、そんなの考える余裕もなかった。
多分お互いに頭が真っ白で、欲望のままに激しく貪るようなキスをする。
息が苦しくて酸欠で、頭が霞むようにボーッとしてもやめられない。
もっと、もっとと久々の再会に飢えていた心が乾きを満たすように、必死にお互いを渇望する。
溺れてしまうんじゃないかと思えるほど、今この瞬間が全力で全てだった。
キスをしながら制服のボタンを外され、ネクタイを緩められる。
「…付けるね」
余裕の無い掠れた声でそう言いながら、真島は俺の鎖骨にキスマークを残す。
容赦なくきつく吸われて甘い痛みが身体に響く。
真島が唇を離したら急くように俺も両手を伸ばして、その襟元を広げた。
ほとんど消え欠けた、うっすらとした痣に唇を寄せる。
あと何回このキスマークを真島に付けられるだろう。
真島が俺のものだという証を、あと何回刻めるんだろう。
おそらくあと1回か…2回目は――。
「――愛してるよ」
不意に頬を両手で包み込まれた。
俺だけにしか向けられることのない、真っ直ぐで優しい、愛おしむような視線。
あと何度この言葉を掛けてもらえるだろう。
何度、その瞳が俺を見てくれるだろう。
「…もう少し、待っててね。もう少しで終わるからね」
応援しないといけないのはこっちなのに、真島はコツンと額を合せて、俺を宥めるようにそう言った。
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