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「そんなに文句あるなら、俺がおかわり用の弁当作ってやろうか?」
「えっ、マジ!? 凛也の料理チョーうまいんだよなああ!」
身を乗り出した健太の目には、今、あのときのカノジョと同じ光の粒が浮かんでいる。
触れたくても触れられない、手に入れることも、閉じこめることさえも許されない輝き。
それを一瞬でも俺に見せてくれたという感動が、首の後ろをカッと熱くさせる。
──やっばり、俺はまだ……。
「あ……、でも、すまん。やっぱいいや」
だが、輝きはまるで雲間からあらわれた流れ星のようにほんの数秒で終わる。
「よく考えたら別の弁当食うとかアイツに悪ぃし。あとから売店でパンでも買うわ」
確信はしたところで虚しいだけだった。
「そうか……。だよな。俺こそごめん」
叶わない願いに未練がましくしがみつこうとした罪人に残されるものはなにも無い。石ころのように地に落ちた余韻を拾うこともできず、ねっとりとした首筋の熱だけがただ不快だった。
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