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用心と信頼性
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シャワーを浴びて自室で一息つく頃には、白田の頭はだいぶ冷静になっていた。眼鏡もリュックもホテルに置いてきたことを今更後悔する。眼鏡は買い直せばいいのでまだいいが、持ち歩いていたリュックには運転免許証やキャッシュカード入りの財布が入っている。しかも手持ちの現金はジーンズのポケットに入れていた小銭だけで、それも電車賃に消えて残り少ない。
「どうしよう。忘れ物ないかホテルに電話してみようかな。あ、いや先ずはキャッシュカードの紛失届けをしてから、眼鏡を買いに行くか。お金ないしとりあえず誰かに連絡して車出してもらうかな。あああしまった!携帯もリュックの中だった。それにここの荷物も早くまとめないと猛牛が怒り狂うぞ。もう!どうするんだよ。」
色々と詰んでいる。うわあと叫びたい気持ちで腰掛けていたベッドに倒れこむ。何を優先するかはっきりしたいが、ベッドのシーツに触れると頭の中はあの忌まわしい記憶をおぼろげに再生する。まぶたを閉じると無意識に眉間にシワがより体が震えた。
「ノボル、かわいい。」
もう何度目かもわからないがそう言われ、体のいたるところを強く吸われた。そして体位を変えて中から揺さぶられ、なすがままに前から後ろからと攻め立てられて射精に導かれる。
「あ、ああ!やめて、やだ、」
本気で制止を求める声は、甘い嬌声のようにロイの耳をくすぐり更に盛り上がる材料になる。それで二度相手の射精に付き合わされて、自らも強制的に二度射精させられた。まだアナルで感じる体とは言い難く、まさに精根尽き果てるとはこのことで、あまりのしつこさに気を失うように横になり目を閉じる。
「だいじょうぶ?おふろいれてくるよ、まってて。」
レイプされた男に、まるで恋人同士のようにこめかみにキスされて鳥肌が立つ。ロイがバスルームへ向かうのを薄目で見届け、這うようにベッドから降りた。床に落ちていたパンツを素早く履き、もどかしい思いでジーンズに足を通すとジッパーも上げずに、急かされるようにシャツと靴を掴み部屋から抜け出した。
そこからは無我夢中で走り、ホテルから遠ざかったところでタクシーを呼ぼうとしてジーンズのポケットに小銭しかないのに気づいた。とぼとぼと少し離れた駅へ向かい、やるせない気持ちで夜を明かして始発の電車に乗ったのだ。
白田はいつの間にか少し眠っていたらしく、部屋のドアをノックする音で目覚めた。ぼんやり生返事をするとドアが開く。
「お前に来客だが会うか?」
その言葉に首を傾げる。助手としてこのマンションへ越して来てから、親以外にここの住所を教えた記憶はない。雇い主は小説家であり、しかも住み込みの仕事なので誰彼となく居所をばらすわけにはいかなかった。
「えっと、誰ですか?」
体を起こしてベッドを支えに立ち上がり、目を細めながら黒谷の立つドアを目指す。
「ロイス・ミラーっていう男。」
ロイスと聞いてロイにつながる。何故この場所へ来れたのかは、忘れ物のリュックの中身を見たからだろう。びくっと立ち止まると、何か察したのか黒谷の方から気を利かせて言う。
「会いたくないなら俺が用件聞いとく。」
その言葉に頷きそうになり、頼るには用心したい男だということがそれを留めた。小説家としての彼の作品は大好きだが、猛牛に対する信頼はゼロだ。
「大丈夫です、会います。でも僕が下へ降りて行くのでエントランスで待っててもらって下さい。」
話を聞かれたくない気持ちの方が恐怖心に勝った。
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