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狭い世界の外側と俺たち〜むつ〜
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『むつ、朝だよ』
優しい声がする…。
本当は早く目を覚まして、こうして優しく囁いてくれる修二の顔を見て、キスしたいと思ってるのに、俺の体は重くて…眠気に頭が冴えない…
手探りで伸ばした手を取って頭を撫でてくれるのは嬉しいけど、その優しい指が、髪をすいて撫でると、気持ち良くて、ふわふわ幸せな気持ちでまた眠くなる。
むつ「修二…あと5分…」
膝枕に優しい手…、でもなんだが…いつもとちょっと違う気がする…。
吉良「ふふ、修二はいないよ」
むつ「ふあ!?」
耳元に降った声が違ってて俺は飛び起きた。
むつ「あれ!?吉良さん?!」
吉良「おはよう。布団からはみ出て寝てるから、ほっぺに畳の跡が付いてるよ」
からかうように笑った吉良さんが指した頬を触ってみると、わずかにおうとつがあって恥ずかしくなる。
見渡すと、俺の布団以外かたづいていて、華南の姿がなかった。
あっ…俺、昨日、ご飯食べながら寝ちゃったのか…。あれ…ズボン…寝巻きの短パンに着替えてある…。
吉良「ああ、水着?昨日華南が脱がして洗って干してくれたよ。上は脱がそうとしたら、睦美が寝ぼけて華南をKOしちゃったから、諦めたみたい」
むつ「えっ、俺、華南を殴ったんスか?」
吉良「華南がイタズラしたんだから自業自得」
吉良さんがクックと笑ながら俺の布団を片付けてくれる。夕飯の時間から寝たならすっごい寝たはずなのに、体が怠くて頭が重い…俺が大きく欠伸したら、まだ眠いのって吉良さんに笑われた。
時間を見ようと携帯を手にすると、待ち受け画面に新着メールを見つけた。
あっ、俺、昨日修二に電話するの忘れた!
そう思ってフォルダーを開いたが、差出人は奏一さんだった。
《急で悪い、明日の木曜の夕方打ち合わせが無くなったから時間取れるようになった、もし都合が合いそうなら、話を聞けるよ》
昨日の夜に入っていたメールだった。
今日…。
今日…奏一さんに時間を貰える。返信返信!
俺はすぐに《ありがとうございます!こっちは、5時には体あきます!》と、返信した。
奏一さんとは、丁度、地元と海との間の駅位で待ち合わせすることになり、時間は夕方6時頃にした。
それにしても修二のやつ、電話もメールもよこさないでやんの…、チェッ。
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華南「えっ!?今日!?」
朝食を済ませて水着に着替え、早めに来た人気の無い浜辺で、華南に奏一さんのメールの事を話したら、華南は驚いて目をむいた。
華南「返事したってお前!だから、修二のそばはお前の方がいいって言ってんじゃん!」
華南はこないだからそう言ってるが、俺には修二を慰めたり元気づけたりする言葉が思いつかない。馬鹿だから、華南みたいに優しい言葉が出てこない。
俺に出来るのは抱きしめてやることだけだ…。
むつ「そもそも俺が話があるって言ったんだから、俺が行かなきゃおかしいだろう?」
華南「そ…だけど…、でも、どうやって説明するんだ」
むつ「ありのままを」
華南「言ったらまずいこともあるだろう…」
むつ「嘘はつかない。俺、馬鹿だから、奏一さんの感に触る言い方するかもしんないし、聞きたくないこと聞かすかもしんないけど、全部話さなきゃ伝わらない、修二のことが好きだから守りたい、それを分かってもらいたい!」
華南「むつ…」
むつ「説得ならお前の方が向くかもしんないけど、俺、もう何も知らないのは嫌だ。お前が間に入ったら俺に言う時言葉を選ぶだろ?」
華南が困った顔をした。
やっぱり、華南は優しいから、俺に不都合なことは俺に言わない気だ。でも、それじゃ駄目なんだ。
華南「キツイよ?」
むつ「嘘や誤魔化しをするよりはマシだ」
華南「……分かった。…でも、今回は全部許して貰おうとしない方がいい。大事なのは〝修二を大事に思ってるから守りたい〟ってこと。そのために現状と真実を知りたいってことだけにしよう。奏一さんは修二の兄であり父親代わりだ…、奏一さんにも受け入れる時間が必要だし…、許してはくれないかもしれない、でも、今は、百目鬼から修二を守るには多くの手が必要だ。そこを突破口に、今は修二を守る手になりたいってことだけにしよう」
俺が修二の過去を知った時。
今まで生きてきてこんなショックなことはなかった。
きっと、奏一さんにとってあの時のことは、俺の何十倍ものショックな出来事だったろう…。
華南の言う通りだ…。
俺の勝手な思いが、奏一さんの気持ちを傷つける…。俺には気の利いた言い方も、奏一さんの気持ちを察することも出来ない。
でも、修二を大事なのも、守りたいのも同じだ。
華南「…そろそろバイトの時間か…」
むつ「戻ろう。大丈夫、俺、頑張るし」
華南「修二のことは俺に任せろ…なんて言わないぞ、お前の代わりなんて俺には出来ない。修二はお前のこと大好きなんだからな」
むつ「ハハッ、知ってる」
今は無理でも、奏一さんに分かってもらいたい、俺も華南も、修二をちゃんと好きだ。
最初は正直分からなかった。男同士の恋愛とか、恋人とか…。だって修二は俺にとって恋愛以前から大事な大事な友達で、俺にとっては隣になくてはならない存在で。
エッチしちゃって、修二が特別な好きじゃなきゃって言うたびに疑問だった。俺にとって修二はもうずっと特別なのに…って…。
説明しろったって難しい。〝俺がそう感じた〟としか言いようがない。
男だとか女だとか、どっちだったって修二を特別に思ってるのは変わんない。抱きしめたいし、キスしたいし、エッチしたいし、笑ってて欲しい。性欲だって言われたら、反論できない。好きだからシたい。でも、他の男とシたいとは思わないし、女だって眼中に無い。そうとしか言えなかった。
けど。こないだ勃たなくなって、色々思い知って、少し怖かった、誤解させるかもって、見えない気持ちを証明する難しさが分かった。
何も変わんない。過去を聞いても。勃たなくなっても、俺は2人を〝特別に〟好きな気持ちは1ミリも変わらない。
あっ、インポになったの動画に撮っとけば奏一さんに証明できたかな?
性欲じゃなく好きだって。
奏一さんにも信じて欲しい、本当に今は修二を恋愛対象として、恋人として好きだって、そんで、付き合って行くことを許して欲しい。
今じゃなくても…時間がかかっても…
隣にいることを許して欲しい…
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華南「許しません!」
事務所で着替えていたら、華南が突然怖い顔をして厳しい声で言い放った。
むつ「何を?」
俺が驚いて聞いてみると、華南が顔を真っ赤にして激怒した。
華南「水着にエプロンはダメでしょ!それじゃあ裸エプロンだし!!ユニフォームのTシャツはどうしたの!?」
裸エプロンって…水着履いてるし。
むつ「それは、今朝まで着てたから、汗でビッショリで洗濯に出した」
華南「えー!そんなことなら昨日無理やり脱がしておけば良かったぁ!」
むつ「…お前、寝てる俺にイタズラしたらしいな…」
華南「…ッ、とにかく!その格好ダメだから俺のTシャツ着とけよ!」
着ていた自分のユニフォームシャツをぬいで、俺に渡してきたが、華南の上半身の裸を見て、俺は思わずシャツを押し返す。
むつ「ッ!お前は着てろ!!」
華南「えッ」
俺が思わず怒鳴ったから、華南がビックリしてる。
ふざけんな!そのイイ体周りに見せて、これ以上言いよって来るやつ増やす気か?冗談じゃない、ただでさえ、奈々があれこれ聞いてきやがんのに。
むつ「お前のLサイズででけェーんだよ!」
ちきしょう。俺と修二にだけ見せとけよ!
そんな俺たちのやりとりを見ていた吉良さんが、笑いを堪えながら、新しいユニフォームを持ってきてくれた。
吉良「睦美、怒らなくても予備のがあるよ、おいで」
むつ「あっ、ありがとうございます!」
俺は今日。俺の言葉で、キチンと修二を〝特別に好きだ〟って奏一さんに説明してくる。
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