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俺たちの道〜華南〜
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翌日の朝。
修二の様子が心配で、俺は修二の家へ向かう。途中でむつと合流し、一緒に修二の家の玄関を叩いた。
玄関から出てきたのは、修二と、奏一さん。
修二は、ここ数日の苦しげなようすと違い、晴れやかに「おはよう」と、微笑んだ。
奏一さんとうまく話せたんだと安心したが、奏一さんの様子は晴れやかとは言えない相変わらず厳しい瞳。厳しい眼差しでこちらを見ながら、昨日、俺とむつが修二に手を貸したことをたしなめる。
そして…
修二は、本当に嬉しそうに笑った。
修二「ちゃんと話して、同居の許可貰った」
安心しきった笑顔は久々で、俺は頬が緩む。
むつは、はしゃいで修二に飛びついた。
むつ「やったな!修二!」
修二「うん、ありがとうむつ」
喜びながらギュウッと抱き合う2人。
俺には、小さな赤ちゃん虎と健気な子兎の微笑ましいばかりの抱擁に見える。
しかし、喜ぶのも束の間。
奏一さんがすぐにむつの首根っこを掴んで2人を引き剥がした。
奏一さんは、むつを少し厳しい目で見据え。
奏一「離れろ。同居は条件付きだ」
と、ピリッと牽制してきた。
奏一「…成績の維持または向上。仕事に対する誠実さ、その他常識を守り、君たちの親御さん達の先約束ごとを守って無事に卒業して、社会に慣れるだろう来年の7月以降なら同居を許すと言ったんだ」
と、その他に住む家のことや、世間の目について色々厳しい条件付き。
むつ「はぁあー!?7月以降!?おせーよ!…ッじゃなかった…、遅いと思います!」
奏一「それと…〝同居の許可〟と、むつと華南、〝君たちを認める〟のとは、別問題だから」
ひー!やっぱり奏一さん厳しいぃー!
元朱雀特攻隊長様の殺人的睨みに緊張する。
奏一「それから…むつと華南は、修二に言っておくことがあるだろ?」
修二「え?」
むつ「あっ!そうそう!俺たち!就職決まった!!」
修二「えっ!!」
自慢げに採用の通知の手紙を出したむつに、修二は驚いて、その手紙を何度か見直した。
一昨日。
修二の様子に限界を感じた俺たち。そこへ、俺の母親から、内定通知が来たとメールがあり、それを持って奏一さんに直談判しに行った。
華南「俺は一昨日、むつはその前の日にわかって、一昨日奏一さんに会いに行った時、そのことを話したんだ。修二に言うの、遅くなってごめん」
修二「…そうか、それで兄貴…急にあんなとこ言い出したのか…、昨日教えてくれればいいのに…」
修二が振り返りながら奏一さんに言うと、奏一は目を細めた。
奏一「大事な事は、本人から聞きたいだろ」
修二「…すいません」
修二のことも含んで言ってるのに気付いた修二が、申し訳なさそうに謝る。
修二には、そこんとこ、本当に反省してほしい。俺もむつも奏一さんも心底思ってる。
奏一「まあ、卒業して、仕事に慣れて家が決まるまでは検討期間だから、問題や約束を破るようなことがあれば、即刻取り消しだ」
厳しいことを言う奏一さんに、修二は曇りのない瞳で見つめ返し、俺とむつの手を取って決意を新たに返事した。
修二「約束は必ず守る」
華南「絶対に」
むつ「ぜってぇー、認めてもらうし」
むつだけは、同居開始時期に不満で、口を尖らせていたが。
奏一さんは、俺たち3人の回答に満足しながら、さてどうなることやら、と息をつく。
まだ未熟な俺たちのために、あえて厳しい態度の奏一さん。
腕時計を見て、「時間だ、学校行っておいで」と言った。
修二が、俺とむつの手を離れ、突然、奏一さんの腕に飛び込む。
突然だったので驚いた奏一さんと、普段そんなことしない修二に、俺とむつも驚く。
奏一さんに抱きついた修二が、照れ臭そうにつぶやいた。
修二「…兄貴、ありがとう。いってきます」
厳しい表情を作っていた奏一さんが、腕の中の弟修二に、思わず表情が緩む。
奏一「……いってらっしゃい」
母子家庭で、父親代わりに厳しくしていた奏一さんの、兄としての柔らかい表情が一瞬覗いた。修二の成長を喜ぶように、そして惜しむように、優しく、優しく頭を撫でた。
奏一「…てめぇーら、修二泣かしたら病院送りにしてやる」
修二「兄貴!やめろ!泣かねぇーよ!」
むつ「泣かすなんて有り得ねぇーし、むしろ俺が泣かされてるし」
華南「俺も」
修二「ぇえ!ちょッ、ちょっと!」
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マキ「ヘェーーー、同棲?♪」
文化祭の前日。
マキと久々に会った俺たちは、マキに誘われて、マキのマンションに来ていた。
あの、夏祭り以降、俺たちからも連絡を取るようになり、ふざけたメールのやり取りを繰り返し、あれから会うのは3回目だ。
もう季節は秋だと言うのに、マキは、相変わらず短すぎるホットパンツに、襟周りの広い鎖骨丸出しのニット服、首にネックレスが光っていて、ネックレスが無いより返って首回りがいやらしく見える。修二が着ていたら完全鼻血もののエロい格好でクッションを抱っこして足をバタバタさせていた。
マキ「いいなぁいいなぁ♪僕も一緒に住みたいな♪」
修二「マキは寮生でしょ?」
むつ「お前イタズラ目的だろ!」
華南「無理無理、兎小屋にライオンだね」
3人に否定されて、マキはプクッと頬を膨らませる。
華南「マキも相手作れば?」
マキ「…うーん、今いい感じの獲物はいるんだけど…」
ぺろっと舌なめずりしたマキに、呆れ顔の修二。
修二「獲物って…」
マキ「ウフフ、生徒に恋しちゃった草食系の迷い子が居てさぁ〜、手取り足取り教えてあげるって言ったら真っ赤になって逃げちゃうの♪可愛くない?♪」
修二「生徒にって…まさか…教師?」
マキ「ううん、事務員さん♪」
楽しそうに語るマキ。
でも、それって、恋じゃなくねぇーか?
華南「…マキはその事務員が好きなのか?」
マキ「うん♪片思いに苦悩する姿って萌え萌えしちゃう♪」
そお言えば…、俺たちの時もそんな感じだった。修二のことがお気に入りだったみたいだけど、結局俺たちとくっつけた。
華南「それ、恋愛じゃねーじゃん」
マキ「いいの♪、僕の勝手♪」
むつ「お前、人のことは散々馬鹿馬鹿言ってるくせに、自分の方が馬鹿じゃん」
マキ「僕は、一途な人が好きなの」
むつ「一途の矛先が別の人間じゃ、意味ねぇーだろ」
むつ君鋭い。
しかし、マキは楽しそうに笑う。
マキ「僕の好物は一途な人、もちろん修二なんかは、大大大好き♪♪」
マキがキラリと妖しい目つきで修二を見ると、むつがすぐさま間に立った。
むつ「修二は俺らのだ!」
マキ「大丈夫、僕、略奪って好きじゃないから。君たちが想い合ってる内は取って食べたりしないよ♪」
フフッとイタズラっぽく笑ったマキ。しかし、やりかねない…。
マキは冗談交じりに話してばかりいるから、どれが本当か判断しずらい。
夏祭りの日も、あれだけふざけていたけど、何かあったんだろうと思う。マキが帰ったのを修二が追いかけた。
この二人、少し似てる部分があるから、何か分かり合えてるのかもしれない。
修二は何も教えてくれないし、マキは言いそうに無い。
むつ「お前、そんなんだから相手出来ねぇんじゃん!」
マキ「やだなぁ♪、僕はこれでもモテるんだよ、この容姿にどんな男もイかせるテクニック♪ちょっと街に出れば誘われ放題なんだから♪」
むつ「はぁあ?お前それ、ただの体目的の男じゃん」
うおっ!むつ君ズバッと切り込んだ!
マキは、むつの一言にキョトンとして、瞳を瞬いた。
むつ「ってか、お前本当はいい奴なのになんでそんなふざけてんの?お前がマジになれば直ぐ出来んだろ。お前って人の気持ちも分かるやつだし、頭もいいし、可愛いとこあるし、ぜってぇー相手出来ると思うんだけど」
マキ「…」
マキは、抱えていたクッションの影で胸元を握り、完全に動きが停止した。
…むつがマキを押してる?
ってか、直ぐに出来るだろってむつ君!マキの相手も男だろうからそんな簡単にはいかないだろう?…まぁ…マキには不思議な魅力あるけど。
マキ…動かないなぁ…もしかして、全然顔に出ないけど今かなりやられてる?
マキ「…………………フッ」
沈黙の末、マキはクスリと笑った。
マキ「むつが僕をそんな風に思ってたなんて意外だな♪恥ずかしいなぁ♪僕のこと可愛く思ってたの?♪」
むつ「…綺麗だし、可愛いよ、普通にしてりゃあな」
マキ「フフッ、僕もむつって格好良くて可愛くて好きだよ♪」
むつ「かわッ…、てめぇー」
マキ「キャッ♪睨んでも全然怖くないもん♪乳首好きぃーのキャワイイむつ君」
むつ「ッ!!黙れ!!」
むつが真っ赤な顔で掴みかかり、マキは笑いながらその手をかわす。
見かねた俺が、むつを抱き上げなだめた。
華南「マキ、むつを怒らせ過ぎると、俺たちの住む家に呼んでもらえなくなるぞ」
マキ「はーい♪ごめんなさぁーい♪」
むつ「反省してねぇーだろ!」
マキ「反省してるぅ♪」
ギャイギャイ騒ぐ俺たちに、修二は笑いながら、マキに近づいた。
修二「マキ、ネックレスがニットに絡んでる、取ってあげる」
マキ「ありがとう修二♪修二はいつもいい匂いだね♪」
修二「僕ちゃん何も付けてないよ」
マキ「ん〜〜、シャンプーのイイ匂い♪」
マキは、ネックレスを直してる、修二の首筋に顔を近づけ、犬みたいにスンスン匂いを嗅いだ。
もちろんむつが黙ってなくて、再び怒らせ、マキはそれを見てゲラゲラ笑う。
友達になっても、マキってやつは全く変わらない。
この日は、それ以上イタズラして来ず。
普通の友達にとして遊んだ。
…いや、普通がいいんだが、むつが調教講座受けるとか言ってたから、ちょっとソワソワ心配してしていた俺。
しかし…
マキの目的は、次の日の文化祭だってことを、俺はこの時、知る由もなかった。
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