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番外編13ひと夜咲く純白の花の願い
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事務所前に、小学一年生位の男の子と、オロオロする矢田がいた。
「うわぁああああん!!」
矢田「ああ、泣かないで」
「わぁあああああん!!」
矢田「どうしよう!あぁ…ベロベロバァー」
「ギャァアーー!!」
矢田は、子供を何とかあやそうとしたのだろうが、逆効果で泣かせてしまっていた。
百目鬼「やめろ矢田!」
「ギャァアーー鬼の親玉が出たァア!」
百目鬼が止めに入ると、子供はさらに怯えて、電柱の影に隠れた。
檸檬「あはは、オニの親玉だってウケる」
杏子「笑ってる場合じゃないわ檸檬、通報されたら面倒なのよ」
檸檬「おっと」
通行人がこちらを見ている。
百目鬼は矢田の首を引っ掴み、事務所階段のところに押しやる。
この場は、チンピラ顏とヤクザ顏は出てってはマズイとの判断だった。
事態を沈静化しようと、杏子と檸檬が男の子を恐がらせないようにニコニコとしながら話しかける。
杏子「ごめんなさいね、ボク、あの人は顏は悪いけど、優しい人なのよ」
檸檬「そうだぞ、顔は悪いけどな、だから泣くなよ」
杏子と檸檬が優しく男の子をなだめるように言った。
しかし、男の子は2人を涙目で睨む。
「出たな!鬼の手先のペチャパイババアとダサ頭やろう!」
ービキッ!
ニコニコしていた2人の顔に、仲良く青筋が出た。
杏子「どうしてくれよう…」
檸檬「このガキ…」
「ヒィ〜〜〜!」
益々怯える男の子。
マキは、流石に見ていられなくなって、男の子の前にしゃがんで目線をあわせた。
マキ「どうしたの?お母さんは?」
「わっ、鬼の手先めぇー!」
マキ「…鬼のところに来た勇敢な君、名前は?私はマキっていうの、君は勇敢に何しに来たの?」
女装してるマキは声を少し作って、柔らかく喋りって女の子のふりをする。
琢磨「お、俺は、琢磨だ!コロを取り返しに来たんだ!」
マキ「コロ?」
琢磨「俺の友達のコロだ!あの鬼がコロを食べる気で攫ったんだ!」
必死な琢磨の言葉を、マキは優しく受け止める。
マキ「ふふ、あの鬼はね、甘いものが好きなんだ、だからコロは食べないよ、コロって誰?」
琢磨「コロは…、俺の飼ってる猫で」
琢磨が言うと、紛らわしい名前に檸檬がツッコム。
檸檬「猫かよ、犬かと思った」
その言葉に、杏子が黙んなさいって目配せして、檸檬が黙る。
琢磨は、マキきの綺麗な顔に優しく見つめられ、ドギマギしながら強がった。
琢磨「パパが、あんまり我儘言うと鬼が来てコロを攫ってくって、俺、信じなかった、そしたらコロがいなくなった。だから、コロを返せ!!」
マキは男の子に目線を合わせ、優しく微笑む。
マキ「コロちゃんはいつからいないの?」
琢磨「…一昨日の朝から…」
マキ「それは心配だね。コロちゃんの写真はある?」
琢磨「ある」
マキ「一緒に探してあげるから、一緒に探そう。ね?♪」
マキがふわりと笑顔を見せると、男の子の顔がボッと赤らんで、頷いた。
檸檬「おお、手懐けた」
杏子「ひとまず安心ですか?」
矢田「天使!」
百目鬼「流石…魔性…」
琢磨君の猫は、茶色の子猫。
野良で弱っていたのを琢磨が拾って面倒見ていたのだと教えてくれた。
檸檬「元々野良なら、散歩じゃねーのか?」
猫探しに百目鬼の命令で1人同行した檸檬は、少し面倒くさそうだった。
琢磨「うるせー変な頭!コロは一昨日から帰ってないんだぞ、お腹すいてるんだぞ!」
マキ「琢磨君は本当にコロが好きなんだね、そのカバンの中は、コロのご飯が入ってるのかな?」
琢磨「見つけた時、腹減ってたら可哀想じゃん、すぐに食べさしてやるんだ」
真剣な瞳の彼に、マキは柔らかく目を細める。
マキ「コロちゃんは幸せ者だね、琢磨君に出会えて…」
琢磨君は家のそばと公園と動物病院を探していたらしいので、捜索範囲を広げ、歩き回って探したが、見つかるのは違う猫ばかり。
檸檬は、最初は面倒くさそうで適当に見えたが、琢磨の真剣に探す姿を見て、その真剣味が伝わったようだった。
檸檬は聞き込み。琢磨とマキは、猫の集まる場所などを探した。
しかし、猫は見つからず、情報もなかった。
檸檬「いないなぁ〜」
琢磨「…」
日の短い12月、3時だというのにすでに日が傾いている。
琢磨は泣きそうなのをグッとこらえて地面を睨んでる。
マキ「んー、探せるところは全部探したんだよね?」
琢磨がコクリと頷いて、堪えていたのが溢れる。ボロボロ泣きながら嗚咽を漏らした。
マキは、琢磨の頭を優しく撫でる。
その優しさに、琢磨はついに大声で泣き出した。
その時。
百目鬼「男がメソメソすんな、諦めるのか?」
低い声が響いて、琢磨がビクッとして慌てて涙を拭いた。
琢磨「泣いてねぇー!」
昼間は怯えて電柱の影に隠れていたが、マキの袖を掴みながら、強面の百目鬼を睨む。
檸檬「百目鬼さん」
百目鬼「手が空いた。そっちはどんな感じだ?」
檸檬「探せるところは探したけど…、保健所もいないし、目撃証言も無いよ」
「そうか…」と言った百目鬼は、マキの隣にいる琢磨の前に膝間付き、ゴツい強面の顔で目線を合わせた。
百目鬼さん、子供との接し方を知ってるんだ。
百目鬼「猫を最後に見たのはどこだ?」
琢磨「自分の部屋」
百目鬼「室内で飼ってたのか…」
琢磨「そう…」
百目鬼「なら、もう一度家らへん探して来い、猫は知らない所を進んでくより、迷ったところで、ウロウロとするみたいだぞ」
琢磨「…そうなの?」
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家の周辺に戻ってもう一度よく探した。
琢磨は声がガラガラになるまでコロの名前を叫んでる。もう、辺りは薄暗い。
琢磨「コロー!」
「〜〜〜」
檸檬「ッ!鳴き声!」
檸檬がピクリと反応した。
マキと琢磨には聞こえなかったが、檸檬は琢磨にもう一度名前を呼ぶように言った。
琢磨「コロー!」
「〜〜〜」
檸檬「上?」
百目鬼「上だな」
檸檬と百目鬼が視線を上に向ける。
しかし、猫の姿は見えない。
百目鬼「おい、家に帰って二階から探してみろ」
琢磨「分かった!」
琢磨が家に入り、二階の窓からコロの名を叫ぶ、檸檬と百目鬼には声が聞こえるみたいで、だんだんと声の方へ移動する。それを見て、琢磨は叫んだ。
琢磨「いた!!」
琢磨が指差したのは、丁度檸檬と百目鬼がたどり着いた古い傷んだ物置小屋。
その屋根のところに猫が見えるらしい、すぐに檸檬が家主に話し、屋根の上を見る許可を取り、その小屋の隣に立っていた木によじ登る。
檸檬「いたいた、なんか動けないみたいだな」
屋根に飛び移りたいところだが、この建物は、古く、大分昔にじい様が手作りしたらしいトタン屋根、人が乗って底抜けしない保証が無い。
檸檬「あんたさ、体重いくつ?俺60」
マキ「私?私は50」
檸檬「軽っ!」
百目鬼「おい、こいつにやらせるな危ない!」
マキ「大丈夫だよ百目鬼さん、それに10キロも違うなら檸檬さんが行くほうが危ないでしょ」
百目鬼「お前は素人だ」
マキ「檸檬さんだって屋根登りのプロなわけないでしょ」
ヘラヘラ笑うマキは、木をよじ登り、トタン屋根に飛び移った。
ーガコン!
大分派手な音に、下で見守る全員がビクッとしたが、マキは笑って手を振った。
確かに、全体的に傷んでる。禿げたり剥がれたりしてるみたいで歪んでる。踏み抜かないように気をつけなきゃ。
猫は剥がれたトタン屋根に足を挟んでいて弱ってる様子。
マキは、琢磨から貰った猫の餌で気を引いて、怖がらせないようにそっと足を抜いてやり、その腕の中に包んだ。
良かった、暴れたらどうしようかと思った。
琢磨「マキー!コロー!」
心配そうな琢磨の声。
応えてやろうと、立ち上がった時だ…
クラっとして、視界が傾いた。
目眩で、マキはよろめく…
琢磨「わっ!?」
檸檬「危ない!!」
百目鬼「ッ!!」
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