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9〔裏番外〕ゆくえ……
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夢の中の俺はスーツ姿だったので、背広を脱いで茉爲宮優絆に羽織らせようとした。しかし、茉爲宮優絆はそれを受け取らない。
優絆「僕は平気だよ。おじさんの洋服が汚れちゃうから」
平気そうに言うが、とても平気には見えない。
茉爲宮優絆の顔と体には、殴られたような痕があり、服も破れてヨレヨレで、しかも何故か濡れていて雨にでも降られたような状態だった。確かに空は雨が降りそうな程暗いが、地面は乾いているし、さらに、茉爲宮優絆の足元は、真っ白な靴下が泥だらけになっていて靴を履いていなかった。
暴漢に襲われただけじゃないんじゃないか…?
だが、茉爲宮優絆は聞いた所でどうせ答えないだろう。
百目鬼「羽織っとけ」
優絆「要らないよ。ふふ、真冬じゃないから平気ですよ」
俺と知り合ったばかりのマキの時と同じヘラヘラした笑い方。
とても表情が小4には見えない。俺の甥っ子に8歳がいるが、全然1歳違いとは思えず、もっと年上のような大人びた表情をしてやがる。
百目鬼「また襲われてーのか!」
優絆「……。おじさんが襲うの?」
声を荒げて叱っても、危機感のない表情でキョトンと首をかしげやがった。今さっき怖い目にあったばかりなのに、どこか関係ないと言いたげ…。
マキの子供の頃だと言われれば、確かに納得だが、こんな小4はおかしいだろ!
百目鬼「誰が貴様のような可愛くねぇ、ちん毛も生えてねぇーようなガキなんか襲うか!」
優絆「……」
思わず怒鳴りつけてしまったが、茉爲宮優絆はやはりビビる事無く、少し不思議そうに驚いてる。
乱され開けっ放しの短パンから僅かに見えるそこはツルツルで、見たくなくても隠さないから見えちまうんだよ!!
俺は、怒り任せに俺の背広を投げつけ、茉爲宮優絆の服を探した。
暴漢に襲われた小4の子供に優しくできない自分はかなり大人気ない。だが、自分の状態に取り乱さない子供を見てこっちが取り乱してる状態にイライラした。
見つかったシャツはボタンが弾け飛んでいて、誤魔化しようがない状態だった。取り繕い上手のマキも、流石に飛んだボタンを塗ったり出来なかったのか。だから清史郎にバレたのか…。
そしてもう一つ気になるものが見つかった。
水浸しのランドセル。
どうやら、茉爲宮優絆はイジメにも合ったらしい。
って、これは俺の夢だ。
百目鬼「おい、茉爲宮優絆、家に送ってやる。靴はどこだ?」
茉爲宮優絆「大丈夫、1人で帰れますよ、ってか、僕を送ったらおじさんが犯人にされちゃうよ、僕の家族心配性だから」
おー、おー。ヘラヘラしやがって、初めの頃のマキそっくりだ。世話を焼かれるのを極度に嫌う。泥まみれで腹すかしの野良猫が施しを拒否するような意地の張り具合だなぁおい。大人をあんま舐めんなよ。
百目鬼「家族が心配するのは当たり前だろうが!さっさと帰るぞ!!」
優絆「えっ!?」
茉爲宮優絆に有無を言わせず、ガバッと肩に担ぎ上げたら、茉爲宮優絆の澄ました顔が急に崩れる。
優絆「ちょっ!何!?」
百目鬼「家に送るっつってんだろ」
〝家〟って単語に反応した茉爲宮優絆は、ジタバタ暴れてとぼけたことを言い出す。
優絆「やだよ!降ろして!誘拐だって叫ぶよ!」
百目鬼「家に送るって言ってんだろうが」
子供らしく慌てた表情になってジタバタ暴れ始めた、だが、小4の茉爲宮優絆は細くて小さくて俺はビクともしない。
優絆「ヤダヤダ!下ろしてよ!本当に叫ぶよ、人を呼んだら困るのおじさんだよ!」
鮮度の良い魚並みにジタバタ暴れたが、小4の茉爲宮優絆がいくら暴れてもなんともならない。
百目鬼「呼べ呼べ、呼んだらお前の状態を家族とやらに洗いざらい喋るんだな、変質者に、イジメか?」
優絆「ッ!!」
からかうように言ってやったら、図星だったようで、茉爲宮優絆はビクっと反応して大人しくなった。
こういうところは、俺のマキとは違って子供なんだな。予想外が顔に出てらぁー。マキもこれくらいなら分かりやすいのに。
百目鬼「俺は、探偵だ、隠し事はすぐ分かっちまう。正直に話すなら味方になってやる。言わないなら、家族には俺から全部話すぞ」
茉爲宮優絆は、難しい顔してジトッと俺を見つめてる。
今のこいつにとって、俺はさっきの変質者と変わらないかもしれない、信用できない見知らぬ〝おじさん〟だもんな…。
そんな老けてるか?
でも、やっと感情が透けてきた、〝この人何者?〟って顔に書いてある。ハハッ、面白い。マキならこんな分かりやすい顔絶対しない。
茉爲宮優絆に靴はどうしたか聞くと、ランドセルが置いてあった場所の木の上を指差した。どうやら、靴は本当にイジメのせいらしい。靴は取ってやりたいが、だいぶ上の方に引っかかっていて、俺も手が届かない。茉爲宮優絆は登って取るから降ろしてと言ってきたが、登るなら、降ろす必要はない。木の下まで担いだまま歩き、茉爲宮優絆を木に登らせた。
百目鬼「取ったらさっさと降りてこい」
優絆「ありがとうございます。でも、靴も取れたし、もう大丈夫ですから、そこどいて下さい」
茉爲宮優絆は飛び降りるつもりだったのだろう、俺に退けと言いやがった。もちろん俺は退かない。
百目鬼「降ろしてやるからさっさとしろ」
優絆「ありがとうございます、自分で降りれますよ」
ヘラヘラ笑いやがって。
百目鬼「さっさと降りてこい。家族に言いつけるぞ」
優絆「…。探偵さんは僕の家族に雇われたの?」
百目鬼「違う」
優絆「…」
百目鬼「降りてこないなら、今から家族に電話しようか?」
優絆「おじさんが退けば降りますよ」
百目鬼「…茉爲宮清史郎の電話番号は…」
携帯電話に向かってワザと大きい声でそう言うと、観念したらしい茉爲宮優絆。渋々で不満そうな茉爲宮優絆は、大人しく俺に体を抱かれてそっと木から地面に降りた。
百目鬼「さぁ、帰るぞ」
優絆「………1人で帰れます」
先ほどと違って俯いて答えた茉爲宮優絆、まだ意地をはるのか?
百目鬼「ア¨?その格好でどうやって帰る?」
優絆「おじさんの背広はちゃんとクリーニング代出しますから…」
百目鬼「いらねぇよ!。汚れて困るなら最初っから貸さねぇ!」
分からず屋のガキに、思わず声を荒げちまった。目の前のこの子はマキであってマキじゃない。小学4年生の茉爲宮優絆だ。
俯いて小さくなる姿に胸がチクチクする。俺は泣かせたくなる性癖を持ってるが、ロリコン趣味はない!断じてない!
大人気ない気の利かない俺、…情けない。
こんな時奏一ならどうする?どうする?
頭フル回転で出た答えは、なんの進歩もない。頭を撫でることだった。
百目鬼「あー…、悪い…」
茉爲宮優絆の頭をそっと撫でてやる。
撫でてる間も何かないか考えたが、俺の頭で思いつく訳もない。
ふわふわの猫っ毛がマキの髪と同じで、いつまでも撫でてるもんだから、茉爲宮優絆はキョトンと不思議そうに目を丸めて俺を見てるのにも気づかない。
優絆「おじ…さん?」
百目鬼「あ?…あ!悪りぃ悪りぃ」
撫で続けたから、茉爲宮優絆の髪がボサボサになっちまってた。慌てて手ぐしで直してやると、茉爲宮優絆はクスクス可笑しそうに笑い出す。
百目鬼「…おい、笑うな」
優絆「ふふふふ、ごめんなさい、…ふふ、ふふふふ」
百目鬼「笑ってんじゃないか」
優絆「だって、ふふっ、おじさん顔が怪しすぎる」
ケラケラ笑い出す茉爲宮優絆。何がそんなに可笑しいんだ。
百目鬼「俺の顔は生まれつきだ」
優絆「ッあははっ」
益々笑われて、ムスッとすると、その顔を見て更に茉爲宮優絆は笑い転げる。
失礼なガキだ。マキが失礼なのは、昔からなんだな。
優絆「あはは、ふふふふ…、そ、そう言う意味じゃ無くて、ふふっ、百面相みたいに眉毛が動いてたから可愛いなって」
百目鬼「可愛い?俺が可愛いく見えるなんてお前の目は相変わらずどうかしてる」
優絆「相変わらず?…おじさん僕と会ったことあるの?」
おっと…、思わず口に出ちまった。
…これは誤魔化すべきか?
ってか、そもそもこれは俺の夢の中だよな?
優絆「……おじ…さん…、ふふ♪おじさんの眉毛、また百面相してるよ♪」
百目鬼「ッ!?…見んな」
優絆「ふふふ♪」
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