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Episode 57にしおりをはさみました!
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Episode 57
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「……おや」
背後から聞こえた声に、咄嗟に首から手を離し振り向く。
心の中で舌打ちをする。
立っていたのは、如月だった。
「死の感覚というのは、生々しいでしょう」
扉を後ろ手に閉め鍵をかけた如月は、薄気味悪い微笑みを浮かべながら柊に歩み寄る。
「……何で、先生が」
愚問だった。
鍵すらかけていなかった鴇の病室には、如月のように、誰だって入り込めた。
詰めが甘い、と言えばそれまでだった。
「何でも何も、鍵が開いていましたので」
では、今度は私から質問です。
2人の距離は1メートルを切った。
「どうして貴方は鍵を閉めなかったのでしょうか?こんなに、恐ろしいことをしていたのに」
「……っそ、れは、俺の不注意で」
「いいえ、違います」
尚も笑顔を崩さない如月に冷や汗をかく。
この男は、何が言いたいんだ。
「教えて差し上げましょう。貴方は、誰でも良い誰かに、止めて欲しかったのです」
「何言ってんだよ、俺はとっくに覚悟が」
「出来ていませんよ。浅葱くんに恋をして、しかし兄によって邪魔をされる日々に、貴方は摩耗していた」
やめろ、やめろ。
脳が警鐘を鳴らす。
奥深くに埋めたものを他人に掘り起こされるように、酷く気分が悪かった。
「貴方を利用する者はいても、貴方を愛し、守ってくれる者はいなかった」
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