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笹原さんは 笑えない。
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その日の夕日は真っ赤だった。
一時間前まで新入生の勧誘のために賑わっていた門の前も、今はもう大きな桜の木が揺れているだけ。
真っ赤な夕日の中のそれに目を奪われ気が付けば俺は首から下げた一眼レフのファインダーを覗いていた。
赤い夕日。
白い桜。
薄らと青い空。
全てをいっぱいに収めたその真ん中を何かがゆっくりとまるで世界を切り裂く様に落ちていく。
ソレは夕日や桜なんかよりも美しくて。
ファインダー越しに目を合った瞬間、逆さまのソレは優しく微笑んだ。
目の前が真っ暗になり、シャッターが降りる。
ザ、と大きな風が花びらを巻き上げたかと思うと派手な音を立ててソレは桜の木の中へ消えた。
「…、え……?」
思わずそんな声が出る。
カメラから手を離し、俺は目の前を見つめる。
「あれ、もしかして死ねなかった?」
桜の木の下には仰向けで横たわり、クスクスと笑う
そんな貴方がいた。
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