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05 二人2
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一瞬、関口を確認したのに、ぼんやりしたまま歩き出した蒼は、はっとする。
「?」
「おい!」
「あ!ごめん!」
やっと目が覚めたらしい。
蒼は、わたわたと関口のところに戻る。
「ごめん。起こしちゃった?」
「起こしちゃったと言うか、踏んだ」
「ええ!?ごめん」
しょんぼりしてしまう。
彼は眠そうに瞳を擦り、布団をかぶった。
「……まだ寝かせろ!」
「は、はい!」
失敗。
一緒に住むと言っても、つい最近まではまったく知らなかった者同士である。
うまく行くはずがない。
一週間で痛感した。
「ごめん……」
蒼は、ため息がでた。
なんでこんなことになっているのだろう。
一緒に住むって本当に難しいことなのだと思う。
二人は、お互いのことを何も知らない。
一緒に住んでいるからと言って、自分の今までのことを話す関係でもないし。
ただ、寝食を共にしているだけ。
だからと言って、それ以上もそれ以下もないのだろうけど。
奇妙な生活は、始まったばかりであった。
蒼は、いつものようにお弁当を作り、スーツに着替えてから外に出る。
今日は、良い天気だった。
眩しいくらいの青い空を見つめてため息が出る。
めんどくさいことになってしまった。
ずっと一人が長かったから。
一人のほうが楽なのだ。
家事の割合とか、生活の様子とかから考えると不公平感は拭い去れない。
だけど。
どうしてなのだろうか。
しっくり来ていない状況なのに、彼を強気に追い出せないのはどうしてなのだろうか?
ふと玄関を閉める直前の光景を思い出す。
関口は「眠い」「起こすな」とか言っていたけど、蒼が「行ってきます」と声をかけると、手を振って「行ってらっしゃい」と返してくれた。
それだけなのに。
誰かがいることは、いいことであるのかも知れない。
一人より二人。
面倒も増えるけど、気持ちが違っているってことも事実。
もう少し様子を見てみようか?
そう思ったら。
少し頑張れそうな気がした。
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