アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
53.心に決める9
-
翌日。
蒼は圭一郎と共にドイツに旅立つ。
関口に逢いに。
彼はどんな顔をするだろうか?
相変わらず不安だけど、圭一郎は何事もないかのように、笑顔で蒼をエスコートしてくれた。
数年前に作ったパスポートが切れていなくて良かった。
昨日から手続きをしていたら間に合わないところだった。
チケットなどの手続きは有田が全部行ってくれた。
今回の旅には彼も同行してくれている。
「この旅は楽しいものになりそうだね」
嬉しそうに笑っている圭一郎は本当に幸せそうだ。
自分は色々考えすぎなんだろうか?
「そうです……ね」
「そうそう。楽しいよ♪こうして蒼と一緒に行けるんだもん。関口がヤキモチを焼きそうだな」
「そんな」
飛行機に乗ってしまえばなんてことはない。
後は到着を待つだけだもの。
圭一郎はこういう生活に慣れているのかも知れないけど、蒼にとったら海外旅行だなんて久しぶりのことだ。
おどおどしてしまうことばっかりだったけど、彼が一緒でほっとした。
最初はトンチンカンな彼との旅ってどうなることかと思ったけど。
何事もなく日本を脱出できた。
隣で毛布をかぶっている彼を見て蒼は苦笑する。
本当に自由で気ままな人だなと思った。
これで二人も子どもがいるようには見えない。
「さて。ちょっと休もう。昨日はあまりに楽しすぎて飲みすぎた。いいかな?」
「ど、どうぞ。おれも、緊張して眠れなかったから……」
「うん。長旅になる。ゆっくり行こう。あ!美味しいのも食べてね。それから、お土産買って……」
「はあ……」
むにゃむにゃと最後の方は聞き取れない。
「もう寝ちゃった」
早いなあと蒼は思った。
だけど、美味しいもの食べて、お土産買ってって……肝心の関口に逢うってことは最後か。
周りの人たちも静かに自分の時間を過ごしているのを見て、蒼はそっと椅子に身体を預けた。
瞳を閉じても眠れそうにはない。
そっと窓から見えている晴れ晴れとした青い空と、白い雲を眺めて時間を過ごす。
関口に逢える。
関口にはいっぱい話したいことがあるんだ。
―合唱だってやることになったし。
―事故に遭ったことも一応、話さないと。
色々考えると、やっぱり早く関口に逢いたいなと思った。
どんな顔されるかは分からないけど、やっぱり逢いたいものは逢いたい。
「いいよね?たまには……わがまま言ったって……」
自分に言い聞かせてから蒼は大きく頷いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
386 / 869