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55.Finale7
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その夜。
桜たちの計らいで、関口は蒼を連れてホール側のホテルに宿泊していた。
音楽家として、とてもいい経験を得たコンクール。
グランプリは関口の手に輝いた。
ピゼッティとは僅差だったと聞いた。
本当だったら彼もよかったのだろうけど。
最後の決め手はショルティだったと言う話だ。
嘘か本当かは分からない。
だけど、こうして結果的にグランプリを頂いたのだ。
喜ばずにはいられない。
「はふ~!良かったね。関口」
大きなベッドにぼふんっと横になって蒼は笑う。
夕食も食べてお腹いっぱいなのだろう。
「蒼は変わらないなあ。この食いしん坊め」
「変わる訳ないじゃん。ほんのちょっとの間だったんだよ?関口が日本を離れているの」
「そうなんだけどな。なんだかあの狭いアパートが恋しいって言うか」
「狭いなんて本当に失礼だねっ!」
「そうか?」
「そうだよ!関口はいっつもそう。最初に会ったときだってじろじろ見てさ。本当に失礼な人だなって思ったよ」
蒼の側に座って関口は笑う。
「そうだっけ?」
「そうだよ~!星野さんと事務室の入り口で立ち話しているのに。おれのことじろじろ見ていたじゃん」
「あ、そうそう。蒼のこと誰かなって思って。見たことなかったし」
「確かに……そうだけど。うん。そうだった。おれがあそこに就職したのは関口が音大に入ってからだから。面識なかったんだしね」
半分酔っている蒼はぼんやり関口を見る。
「うん。おれ、ずっと昔からあそこが好きで通っていたし。途中から引っ越しちゃってあんまりは顔出せなかったけど、結構星音堂歴は長いんだから」
「本当だ。おれの先輩だね」
「そうそう。蒼の先輩」
「ぶ~、なんか開き直られるとむかつく」
ごろんとしている蒼を引き寄せて、関口は笑った。
「ねえ、蒼。おれのこといつから好きになった?」
「へ?」
「ねえ」
「ねえって言われても。いつからって分からないよ。おれ」
蒼はまごまごしている。
そういう困った顔をさせるのも楽しい。
「いいじゃん。大体でいいからさ」
そういわれても。
蒼はう~んと考えをめぐらせる。
「関口のこと、最初は生意気だなって思ったし。なんだかおれに突っかかってくるから嫌われているのかなって思っていたり。でも関口、優しいじゃん。おれが風邪のときも看病してくれたし。はっきり意識したのはやっぱり、関口にキスされてからかな~」
「遅っ!」
「は?なに、遅いって」
関口は蒼をぎゅ~っと抱きしめる。
「おれなんて、本当に最初の頃から蒼のこと好きだったんだけどなあ~」
「は?そういう風には見えなかったけど!?」
心外だ。
蒼は瞬きをして関口を見つめる。
「最初の頃。冗談で付き合ってって言ったじゃん」
「え?ああ、あったね」
「あの頃から蒼のことは気になっていた」
「ええ!?知らないって。そんなの。だってただの意地悪じゃん」
「可愛い子には意地悪したくなるわけ」
「ジャイアンかよっ!」
「ねえ。蒼、キスしていい?」
「ちょっと、無視するな……ッ」
日中の続き……と囁いて、関口は蒼に口付けをする。
関口のキスは好きだ。
と、言っても関口のキスしか知らない蒼。
ショルティとキスしたなんていわれても、覚えていないんだから仕方ない。
だけど、やっぱり好きなのだと思う。
大好きな関口だから。
関口のキスだから気持ちがいいのだと思う。
深くなるキスに思わず関口の背中に回した手に力を入れる。
そういうところがますます可愛く感じる関口。
ふっと軽く笑ってから更に深く口付けをした。
「……っ、ねえ。蒼」
「ん……ふッ、なに?」
お互いの唾液で光る唇。
「おれのこと名前で呼んでくれない?」
「え?」
上から彼を見下ろす。
「な、に?」
「だって。みんなおれのことを圭って呼んでくれる。蒼はいつまで関口なの?」
「そ、それは……」
あんまり考えたことがなかった。
ただ、最初から関口は関口だったし。
「圭って呼んでもらいたいんだけど?」
含み笑いをして、彼は蒼の左耳たぶを甘噛した。
「はぁッ……わ、わかったって……ばっ」
耳孔に入り込んだ舌は執拗にそこを嬲った。
身体が跳ねる。
「蒼は耳も弱い。ってか、どこもかしこも弱いね」
「ひゃ……んッ!」
いつもの場所。
蒼の背中の古傷。
「いや」
「嫌じゃないくせに」
「は、……んッ」
「圭って呼んでごらん」
涙目になっている蒼は天井に視線を向け、そして関口にしがみつく。
「圭……っ」
「そう。もう一回」
「や、あんっ」
「蒼」
「け、圭っ!」
喘ぐようにつむがれる自分の名前。
関口は快楽の世界に浸る。
「気持ちいい。蒼に名前を呼ばれると」
「え?な、なに?」
目の前がちかちかして蒼にはなんのことかさっぱり分からない。
ただ関口から与えられる刺激に身を任せるしかないのだ。
彼の背中のシャツを握り締め、瞳を閉じる。
「蒼が欲しいよ」
「圭……っ」
「いいよね?」
「い、いいよ……ッ」
彼の返答に満足したのか。
関口は口角を上げ笑みを浮かべる。
「蒼はおれのものだからね」
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