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56.迷子の子5
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「ありがとう!おれ、本当に断られたら……。きっと会社にもいられなくなるし、せっかくのチャンスもなくなるし。どうしようかと思って」
半分泣いている彼は面白い。
圭は爆笑した。
「なんだか蒼とキャラかぶってんな」
「は、はあ?失礼しちゃうね!圭は」
「だって。蒼はすぐ泣くし。おろおろも得意だからな」
「む~!」
一人怒っている蒼なんてそっちのけで、圭は高塚と打ち合わせを始める。
「ともかく。なにがあろうと、おれの活動拠点はこの場所だから。高塚は東京に戻って仕事の調整をしてくれないか?」
「え!はい。もちろん。会社にはおれの場所もあるし。そこで調整作業をさせてもらいます」
「そうそう。後ね。おれは基本、月曜日は休み。日曜日はここで一日ヴァイオリンの指導があるから。それから、火・木の夜は市民オケの練習ね。後は、明星オケの練習とか定演とかもあるから、そういうのも調整してね」
彼はメモを取りながら目を白黒させている。
そうだ。
それじゃなくても圭は結構忙しいのだ。
そうそう仕事は入れられないだろう。
「おれは金儲けをすることはあんまり考えてない。それから、ステップアップできる仕事だったらいいけど、売名傾向の強い仕事なんかは引き受けたくない。だから、仕事を決めるときは必ずおれにコンセプトを説明してもらいたい。それから考える。勝手に契約してこないこと」
「了解です」
「以上。最初に言っておきたいこと。あとはその場その場で伝えるから」
「はい……」
めまいでも起こしているか。
ぐるぐる回っている高塚を見て、気の毒だなと思う。
一緒にプライベートでいるだけで、彼のわがままに振り回されているのだ。
蒼だって最近、やっと慣れてきたってところなのに。
これから大変だろうなと思う。
こういうところは父親譲りなのだろう。
圭一郎も気ままで、結構苦労させられているみたいだ。
有田は。
思い出して笑ってしまう。
「ひどいです。蒼くん」
「あ!ごめんなさい。別に高塚さんのことを笑ったわけではなくて……」
だけど、笑いは止まらない。
「でもさ。圭も一人前の音楽家になったってことなんだよね!すごいね!」
それがどうだかは分からないけど。
まあ、そうなのだろう。
圭は少し、恥ずかしそうだ。
なんだかんだ言っても一番嬉しいのは彼なのではないか?
マネージャーが着いて、やっと一人前。
まあ、少しは圭一郎の配慮も入っているけど、そこのところは目をつぶるらしい。
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