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61.関口家騒動3
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高塚に案内されてやってきたのは都内のホテルの一室。
こういう場所で打ち合わせって。
自宅でもかまわないくらいの話だ。
エレベーターを降りて、部屋に入ると、中から大きな声が聞こえていた。
来るわけがないと思っていた圭にしたら狐につままれた思いだ。
「やあ!元気そうだね。圭」
ソファに座り、横にいる有田に向かって一生懸命に話をしていた圭一郎は嬉しそうに顔を上げた。
「なんでいるんだよ?」
「失礼だな。今日は打ち合わせだと言う話じゃないか」
「あんたが打ち合わせに顔を見せるなんて驚きなんですけど」
厭味を呟き、そっと向かい側のソファに腰を下ろす。
「おれだってきちんと打ち合わせには出るさ。なあ?有田」
同意を求められても困るといった顔で有田は首を竦めた。
「ひどい。ひどいマネージャーを持ったものだ……」
ぶうっといじけている彼を見て、不安を覚えた。
緊張しているのだ。
柄にもなく。
偉大なる父親。
打ち合わせ。
最初は半信半疑だったから、現実のものになってくると緊張した。
「お忙しいところ、大変恐縮です。今回の企画を提案させていただきましたきららホール館長の渋谷と申します」
圭一郎にばかり視線がいっていたが、渋谷は確かにそこにいた。
クリーム色の上品なスーツを纏った初老の女性。
品格のある女性だと言うことは一目瞭然だった。
「渋谷さん、今回はこんな素晴らしい企画をしてくれてどうもありがとう!」
圭一郎は嬉しそうに手を振る。
明らかに違う種類の人間だ。
彼女は困った顔をして笑っていた。
その様子をぼんやりと眺め、圭は新幹線の中で見てきた企画書を思い出す。
今回の企画は「きららホール」の開館記念事業こけら落としになっていた。
新しいホール。
東京にはいくつホールが出来るのだろうか?
「曲目は先生にお任せいたしますので、その辺りも詰めていただきたいと思っています」
若い女性職員がコーヒーを出してくれる様子を見つめる。
曲か。
なにがいいのだろうか?
オケとの協奏曲。
盛大なものがいいのか?
圭一郎といえば華やかなイメージがある。
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