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80.家政夫は見た!5
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「それはこっちが聞きたい!脅迫されているのかも知れん。室長がそんな理由で大事な仕事をすっぽかす訳がなかろう」
ぷんぷん怒ってみせるけど、結局は安齋も本当のところが分からないようだ。
なんだ。
そうか。
分からないから苛立っているだけなのか。
そう考えるとなんだか可笑しくなった。
軽く笑ってしまう。
すると、安齋に怒られた。
「笑うところか!」
「すみません。……でも。安齋さんたちもなんでか分からなくて困っているんですね」
首を竦めつつも、そっと安齋の様子を伺う。
彼は微妙な表情をし、大きくため息を吐いた。
「そうだ。室長の行動が理解できない。接待なんて言葉、あの人には似合わない。それに、こんなに情熱をかけている仕事を無責任に投げ出す人には思えない」
彼は。
すっごく人望厚い上司なのだろう。
この安齋が、ここまで褒め称えるなんて。
そんな保住が……。
「安齋さん。どうしても気になりますよね?」
「それはそうだが……」
「調べましょうよ!保住さんが、そんな人じゃないってことをハッキリさせたほうがいいですよ」
「お前なあ。おれは暇じゃないんだぞ?」
「おれたちの仕事じゃないですか」
蒼の言葉に、安齋が黙り込む。
初めてのことではないか?
今まで、自分の言葉をまともに取り合ってくれたことがあるだろうか?
「仕方ない。お前に付き合ってやる」
「ありがとうございます!」
蒼は立ち上がってぺこっと頭を下げる。
が、しかし。
どうやったらいいのか、皆目見当がつかないのが本音だ。
「お前、方法も考えないでどうするつもりだったんだ?」
「えっと……」
蒼は誤魔化し笑いをする。
「そういうところは吉田そっくりだな」
安齋は呆れて、大きくため息を吐いた。
「すみません……」
「全く」
彼はそう言いつつ、携帯を取り出す。
「どうするんです?」
「さっき、業務の件で電話をした時に、駅のアナウンスが聞こえていた」
「駅、ですか……?」
安齋は探偵みたい。
よくそこまで聞いている。
確かに。
駅構内では、独特なアナウンスが流れているものだ。
「お前も責任をとれよ」
「え?な、なんでおれが」
「そもそもが。お前たちが連れ込んだ外来種だろう。連れ込んだ輩が回収しないでどうするのだ」
外来種とか、回収とか。
ショルを人間扱いしていない様子に、内心むっとするが、内容的には同意せざるを得ない。
蒼は申し訳なさそうにため息を吐く。
「ショルってあちこちで好き勝手する奴だって知っていたのに。すみません」
後から考えると、なにも蒼が責任を取る必要もない話だ。
ゼスプリの凱旋コンサートは、蒼が企画したものでもないのだし。
ショルの行動を管理する立場でもない。
なるべく、みんなにご迷惑をかけないようにとしてきたことには違いないが。
それにしても、ここまでの責任が蒼にあるはずはないのに。
落ち込んでいた田口の横顔が忘れられないのだ。
蒼は安齋を見る。
「保住さんを取り返してきます!」
「お前」
「みなさんにご迷惑はおかけできませんし」
こうと決めたら梃子でも動かないのが蒼。
彼は飛び出していきそうになるが、安齋に引き留められる。
「移動されると困る。自転車なんかでは時間がかかる。おれが送っていく」
「でも、勤務中じゃ……」
「哀れな同僚も放っておけないし。上司の面倒を見るのも業務の一環だ」
安齋はそういうと、廊下に歩き出した。
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