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105.恋を患う6
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篠崎は、星音堂では不思議ちゃんで通っていた。
にこにこして、お話しもするが、自分の気持ちを話さないからだ。
慣れないせいなのか?
性格のせいなのか?
いつもにこにこして、多くは語らない。
それが篠崎だからだ。
だけど、ここ数日。
彼の調子が悪いことを星野は見抜いていた。
みんな気付いていない様子だけど。
星野は知っている。
篠崎。
なんだか変だった。
笑ってはいても、心ここにあらずだったから。
二、三日は様子を見ていたが、あんまりにも改善しないようなので、つい。
星野の悪いのかいいのか分からない癖で、彼は篠崎に声をかけていた。
外に連れ出し、喫煙場所で篠崎に話をする。
「どうしたんだ?篠崎」
彼は、星野がそこまでするどい男だとは露とも思っていなかったようで、びっくりした顔をしていた。
「どうしたんだって……どういうことですか?」
「どうもこうも。言葉の通りなんだけど?」
篠崎は星野を見つめる。
いつもの笑顔はない。
「なんか悩みでもあるのか?仕事のこと?なんだかおかしいなって思って」
「……。すみません。仕事のことじゃないんです。プライベートのことですから。すみません。職場にまで持ち込んで」
「おれはいいけど。他のやつらも気付いていないようだし。だけど」
「すみません」
篠崎はいうつもりはないのだろう。
ただ黙って下を向いていた。
「なにで悩んでいるかなんておれは知らんけど。あんまり思い詰めるなよな?」
星野の言葉に、彼はぺこっと頭を下げて事務所へ戻っていく。
蒼だったら、ここで口を割るんだろうけど。
いまどきの若い人はなんだかよく分からない。
「おれもおっさんかな?」
携帯がぶーっとなっているのに気づく。
タバコを消して、携帯を取り出すと、油井からのメールだった。
『今晩はお好み焼きだからね!』
ただそれだけ。
「こいつも、何を考えてるか分からないしな」
星野は頭をかいて空を見上げた。
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