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112.圭の休日10
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しばしの別れのとき。
圭は名残惜しそうに蒼を見る。
このまま、離れてしまって、また会えなくなってしまったらどうしよう?
そんな不安がむくむくとわいてくる。
「大丈夫。そんな顔しないで」
蒼は苦笑して、圭の手を握る。
「携帯に連絡するから。圭も連絡して。アパートとか、職場の連絡先も教えるから」
「蒼……」
「お休み。なるべくとるからね。その時は一緒に……」
「そうだね」
ぎゅーっと蒼を抱き寄せて、圭は彼のぬくもりを再確認する。
「一緒にいたい。一分でも一秒でも」
「うん」
お互い、忙しい身。
そんなことは難しいとはわかっているけど……。
「大丈夫。大丈夫だよ」
「うん」
迎えに来た奥川の車に乗って、蒼は姿を消した。
残されたけだもと圭はなんだか情けない顔をしていることに気づき、顔を見合わせてしまう。
「情けないね。おれ」
「にゃおん」
けだもは高らかに鳴いた。
迎えに来てくれた奥川はいつもと変わりなかった。
蒼は彼女の横顔を見て、「ありがとうございました」と声をかけた。
「なにがです?」
「いや。うん。いいの。ありがとう。奥川」
「そんな立場ではありません。お気になさらずに……」
嬉しそうに微笑む蒼を見て、彼女は思った。
これでよかったのだと。
彼の笑顔を見たのは、いつぶりだろうか?
そう思っていた。
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