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初登校と謎のクラスメイト
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レオが通うことになった中学校は、上野公園と日暮里駅の間にあり、地下鉄で通うのが便利のようだ。
登校初日も、レオは勇より早起きして朝食を作る。勇はこれから毎日学校生活が始まるレオに
無理はさせられないと言ったが、料理は自分の趣味であり楽しいからと言って聞かない。
勇はレオが何と言おうと、炊事の負担を減らしてあげたいので、勇もいつもより早めに起きて朝食作りを伝うことにした。
「ちょっと勇、1人で大丈夫だって言ったのに……。」
「今日から日中はお互い忙しくなるんだから、家事は分担していこうぜ。」
勇は優しく微笑み、レオの頭を撫でてそう言った。
「もう、わからずやだなぁ勇は。」
顔を赤らめて、困った表情をするレオだが、溢れ出る喜びは隠しきれないようだ。
そんなレオの様子を見た勇は、あまりの愛しさに思わず抱きしめたくなるが、朝の支度時間はそんなに長くない。迫りくる欲望はぐっと押し込めた。
ニュースを見ながら朝食や着替えを済まして、2人は家を出る。勇はレオを駅まで見送り、会社へ向かった。
今日はレオが人間界で自立する最初の一日だ。いつも勇と行動していたレオは、一人で外出していることに少し違和感を覚えた。
やがて、電車が到着して乗り込む。電車の乗り方は、一度勇と実際乗って教えてもらったので知っている。
自分以外の乗客には、勇と似たようなスーツを着たサラリーマン、学校によってそれぞれ違う制服を着た学生などがいて、次々と乗降を繰り返している。
レオは改めて人間界という未知の世界にいることを認識した。さらに今日からその世界の学生になるというハードルの高い課題にようやく不安を感じてきたようだ。
ずっと大好きな勇といすぎて、いつの間にか別世界にいる不安や恐怖が薄れてしまっていたようだ。
乗客には、レオと同じ学校の制服を来ている子達もいて、あんな生徒いたっけ?と言う顔でレオを見ている。
レオのブロンドヘアとエメラルドグリーンの瞳、そしてその美しい容姿は余計に目立つ。注目されてレオは少し緊張し、頭がクラクラしてきたようだ。
でも、人間界で生きていくために学生という身分を用意してくれた姉のアルル、一緒に住むことを許してくれて、愛してくれる勇がいることをレオは考えた。
「ぼくはもう1人じゃないんだ。頑張れレオ……!」
心の中でそう叫び、両手で左右の頬を叩き、気合いを入れた。
やがて学校に着くと、初めに職員室へ向かい、今後の学校生活について担任となる先生から諸々の説明を受けた。職員室には一度勇と手続きの関係で来たことがあるので、道に迷わなかった。
2年生のクラスはA~E組まで存在する。レオはB組に在籍することになったようだ。あっという間にクラスのみんなへ自己紹介する場面となる。
「魔か、いや、ロンドンから来ました。レオ・ナヴァールです。よろしくお願いします!。」
簡単な自己紹介を終え、指定された窓際の一番前の席に座る。レオは、なんとか自己紹介を乗り越えることができたようだ。出身を魔界と言いかけて、危うく転校初日から空想が好きな男子と思われるところではあったが。
休み時間には、少しずつレオに話しかける生徒が増えてきたようだ。さらにはレオの美貌の噂を聞きつけ、他クラスの生徒も押し掛ける始末だ。
「レオくん彼女はいるの? 」
「レオくん連絡先交換しよ? 」
「あの……おれと一緒に写真……。 」
このように生徒達はレオに質問のシャワーを浴びせまくるが、優しいレオは一つ一つ丁寧に対応する。そのせいか、今日すべての授業が終わる頃にはぐったりだ。
帰りのホームルームが終わり、机の中の教科書等をカバンに入れ、帰り支度をする。生徒には部活に行く人、早々に帰宅する人、残って少し駄弁っていく人など様々だ。
実はレオは、教室の中でとある生徒から強い視線を感じていた。初めは気にしていなかったが、授業中も休み時間もずっとその視線は注がれたままだったので、さすがに無視できなくなった。
その生徒は、窓際の一番後ろの席に座る男の子で、髪型が黒のミディアムヘアでポニーテールの、レオに負けず劣らずの中性的な美少年だ。
ただ、あまり他の生徒とほとんど話すことなく、休み時間もずっと自分の席で本を読みながら過ごしているおとなしい子だ。
そんな控えめな少年から感じる視線は、レオに何かを訴えているかのようなとても強力なものだ。放課後になってさえも読書をする傍ら、レオの帰りを見送るようにじっと見ている。
背を向けない限り、視線は向けられない。レオは振り返り、帰るついでに軽く挨拶をするという呈で近づいてみることにした。
「読書中ごめんね。えっと、まだ話してなかったよね。よかったら名前を……。」
「守屋葉瑠……。」
その男子生徒は顔を赤らめ、本で口を覆いながらポツリと名を名乗った。
レオは葉瑠と直接話すことで、邪気のようなものは一切感じなかったようだ。寧ろ引っ込み思案なところが少し勇に似ていて、ちょっとかわいいと思うぐらいだ。
「で、では、自分はこれでっ!」
レオは葉瑠が自分に強い視線を浴びせる理由を会話の過程で探ろうと思ったが、葉瑠は慌てて帰って行った。
レオは、不自然に初対面の葉瑠にいきなり話しかけて、怖い思いをさせたかと少し反省した。対面した結果、自分に害を及ぼす感じの子でもなさそうなので、視線はなるべく気にしないようにしようとも思った。
「レオ、学校はどうだった?」
レオより少し遅く帰宅した勇は、少し不安げな顔で尋ねた。
レオは、クラスのみんなと仲良くなれそうなこと、勉強も問題なくついていけそうであることを話した。そして、最後に謎の少年葉瑠のことも話した。
「なるほどな。一人で過ごしている恥ずかしがり屋の少年か。もしかしたら、今のクラスの子達と仲良くなるタイミングを逃したから、初対面のレオと仲良くなれたらと思っているのかもな。」
「きっと不器用な子なんだよ。おれも基本的に引っ込み思案だから、なんとなく分かるんだ。」
レオは勇の助言を聞いて、ゆっくりでいいから葉瑠と話す機会を増やし、打ち解けて友達になろうと考えた。
「話を聞いてくれてありがとう。そうそう、今日の夕食はカレーだよ。勇が来るまでにもう出来ちゃった。」
「通りでカレーの良い匂いがすると思ったよ。ありがとなレオ。盛り付けと片付けはおれがやるからな。」
勇は、今のところレオが学校で上手くやっていけそうなことが分かり、ホッとしたようだ。レオが作る美味しいカレーとビールと共に、不安も一緒に胃の中へ溶けていった。
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