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「あっ…!」
暖かい南風が、桜の花びらと一緒に吹きこんで僕の持っていた大量のプリントもろとも飛ばされて廊下一面を真っ白に染めた。
「だ…、大丈夫ですか?」
一面プリントだらけの廊下へ小柄な生徒が現れる。長い前髪から少しだけ見える頬はほんのり桜色に染まっているが肌は淡く色素の薄い彼はまるでプリントの妖精のようだ。…いや、ここは桜の妖精と比喩するべきか。
突然現れた彼はいつの間にか僕の足元でプリントを一枚一枚拾ってくれていた。慌てて僕も廊下に膝をついてばらまいた紙を集める。彼は紙を拾う所作すらも美しくて、合間に彼を見つめていると長い前髪の隙間から大きな瞳がこちらを見つめた。
「…先生?」
「ご、ごめん。なんでもないよ…」
不思議そうに首をかしげる彼に背中を向けて残りのプリントを集めきり、廊下には僕と彼と桜の花びらだけが残った。お礼を言おうと彼がいた場所を振り返るとそこにはプリントの束があるだけで彼の姿はなかった。音もなくいなくなってしまうなんて。もしかしてあの子は本当に妖精だったのだろうか…いや、まさか。
上履きのラインが緑色だったから、一年生であることは確かだけどあんな美人な子、新入生にいただろうか…。それにズボンを履いてたから男子生徒であることも間違いないと思うが、肌も髪もあんなに艶やかで繊細な彼が本当に自分と同じ男性というのはにわかに信じがたかった。
どちらにせよあんな綺麗な子がいたら噂になってもおかしくないのに。入学式からまだ3日しか経ってないからこれから話題になるのかもしれない。せめてクラスが分かれば授業のときにお礼が言えるのだが。そんなことを考えているうちにあっという間に予鈴が鳴ってしまった。しまった。急いで授業の準備をしなければ。
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