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133
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~夏紀side~
18時
「久保社長……」
「ん、どうかした?」
仕事が終わって帰ろうかという頃。
困り顔の秘書が部屋に入ってきた。
「それが、アポなしで来客で……それも高校生なんです。」
「高校生?」
(春陽の弟か?でもそれなら連絡よこすだろうしな……)
陸玖や空夜は高校生だし、部活が終わってからここにくればこの時間でもおかしくはないが、会社にわざわざ来る理由がない。
あったとして、連絡先を知っているのだから何も言わずに来ることはない。
「名前は?」
「こちらを渡してもらえればわかると……」
渡されたのは小さな手紙。
中身を確認した夏紀は、口を開く。
「5分待たせて。下のカフェに入ってろって言っておいて。知り合いだから。」
「かしこまりました。」
片付けをし、本社併設のホテルの支配人に声をかけてから、カフェに向かう。
入口からは少し離れたところに、制服姿で座っていた。
「久しぶりだな。」
「夏紀にいさん……突然ごめんなさい。」
「構わないよ。もう仕事は終わったし……でもどうしたの?航。」
天条家の次男、航のことを、夏紀は幼い頃から知っていた。
航は父親の不倫でできた子だった。
航の祖父は激怒し、ひと悶着もふた悶着もあった末、母親と航に住まいと金を与える代わりに、天条家とは関わらないという約束を取り付けさせた。
ところが一転、古森財団から縁談の話がくると事情が変わった。
古森財団代表の孫娘は、航と幼稚園からの付き合いだった。目に入れても痛くない孫娘が、婚約するなら彼がいいと言って聞かない。
そこで航に直接ではなく、天条家にその話をもちかけた。
古森の手にかかれば、航が天条家と関係があることなどはすぐにわかった。
夏紀の父親は紘と親交が深く、その関係で夏紀も幼い頃から紘と面識があり、結果的に天条家や古森とも関わりを持つことになった。
正直あまり興味もなく、どうでもよかったのだが、航だけは別だ。
懐いてくれていて、それゆえに可愛がってきた。
家同士の婚約は夏紀はあまりよく思わなかったけれど、航と幼馴染だと聞いて、それなら恋愛感情があってのことなのかと納得している。
「ちょっと、相談があって……」
「相談?」
「夏紀にいさんは、どうやって好きな人と付き合えたの?」
春陽と付き合えた経緯といえば、半分くらいは紘のおかげだし、付き合う時の告白も春陽からだった。
ラッキーとしか言いようがない。
「ご両親には反対されなかった?」
「反対……された。当時俺はもう成人してたけど、相手は高校生だったからね。子どもを手篭めにするんじゃないって怒られた。」
「……家柄とかは?」
「家柄?うちは別にそういうのは気にしてないからな。俺は一応、アメリカで飛び級で大学も卒業してるけど、俺の恋人は大学行ってないし……家もまあ、普通だよ。」
有名人の家を普通と言っていいのかは謎だが。
「っつーか航は家柄の心配する必要ないだろ。……もしかして不倫がどうのこうのって話されたの?俺がなんか言ってやろうか?」
「そうじゃ、ないんだ……」
俯く航の様子に、何かおかしいなと思う。
「俺は……婚約、解消したい。」
「は?!」
思わず大声を上げてしまい、一瞬視線が集まる。
すみません、と軽く頭を下げて、会話に戻る。
「なんで?幼馴染なんだろ?お互い好きだから婚約したんじゃないの?」
「守ってあげなきゃいけないとは思う……でも、俺は別に好きな人がいて……」
どうやら夏紀が思っていた状況とはまるで違うらしい。
「その好きな人ってのは、一般家庭なの?」
「……多分?」
(なんだ、多分って。有名人の家か?航の学校って、春陽の弟たちも行ってるとこだもんな……有名人の子ども多いって聞いた気がする。)
「でも実質、航は天条とは関係ないだろ。名字も結局野田のままだし、家にも戻ってないし。古森のジジ……お爺様が無理やり認知させただけだからな。美紅ちゃんと話し合って、納得してもらえばスムーズに行くんじゃない?」
あの祖父は、孫娘の美紅が言うことなら平気で婚約解消もするし、無理やり結婚もさせる。
美紅がどんな子かまではわからないが、美紅と話し合いができさえすれば、そう難しいことではない。
「夏紀にいさん、聞いてない?美紅が誘拐されかけたの……」
「聞いてない。」
「高校1年生の秋くらいかな……学校帰りに車に連れ込まれて、体触られて……そのまま連れてかれそうになった、らしい。俺はその時全然そばにいなかったし、古森との約束で高校卒業まではあまり関わらないようにって言われてたから詳しくはわからないんだけど。」
「レイプ未遂ってこと?」
「そこまでではないかな……セクハラって感じって美紅は言ってた。まあでも、相当怖かったと思う。」
「それは、そうだろうけど……それ航は関係ないだろ。」
「とてもじゃないけど、婚約解消なんて話できる雰囲気じゃなかったんだよ。」
航は元々が優しい子だ。
傷ついているのを見て、何も言えなくなってしまったんだろう。
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