アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
第十章にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
第十章
-
「うわあ~・・すっごい混んでますね。」
「まあ・・予想はしてたけどな・・・」
目的地に着いた二人は、ズラリと並ぶ人混みに悠叶は好奇心で一杯というように目を輝かせて言うのに対し、明らかにテンションが下がったように言う迅鵺。
「悠叶さん、寒くてテンション下がってたんじゃなかったっけ?」
「え?そんな事ないですよ?それより早く行きましょうよっ!」
さっきまで寒さで縮こまってたとは思えないようなはしゃぎように、迅鵺も微笑ましく思ったのか笑みを浮かべると、大人しく悠叶に手を引かれていく。
「お兄さんデカイねっ!はい、一つ三百五十円ね。」
並んでる時間、寒さを凌ぐ為に屋台で豚汁を買った二人は、ある事に気付く。
「と、迅鵺さあ~ん、食べれないです・・」
利き腕を怪我している悠叶は、購入したものの箸を使えない事に気付いて迅鵺に泣き付く。
そんな悠叶に、迅鵺も困ったように溜め息を吐いた。
「────しょ、しょうがねぇな・・ほらっ・・・」
迅鵺は、自分の割りばしで悠叶の豚汁の具を掴むと恥ずかしそうに悠叶の口元へと運ぶ。
それを悠叶は、フーフーと念入りに冷ましてから口の中に入れて、念入りに冷ました癖にハフハフさせながら食べる。
「────しかも、猫舌かよ・・スープは自分で飲めますよねっ?具だけですからね!」
「すみません・・熱いの駄目で・・・はいっ!ありがとうございます。」
“寒がりの癖に猫舌とか、我儘っすね!”というよく分からない迅鵺の文句にも、悠叶は幸せだと言わんばかりの笑顔で、迅鵺も悠叶の笑顔には弱いのか、いつの間にか微笑ましく思いながら自分も豚汁を口へ運んだ。
豚汁を食べながら二時間以上並んで、やっと先頭までたどり着いた二人は、五円玉をお賽銭箱に放り投げると鈴を鳴らす。
二人共同じタイミングで手を二度叩くと各々、願い事をする為に目を瞑った。
“これからは悠叶さんが、幸せに過ごせますように”
迅鵺は、それだけ願うと顔を上げた。
隣に居る悠叶を伺うと、悠叶も終わったようでニコリと迅鵺に笑い掛ける。
「────絵馬でも買います?」
悠叶が、あまりに優しく笑うものだから、つい迅鵺はドキドキしてしまい、誤魔化すように絵馬やおみくじなど売られている場所を指さした。
悠叶は、絵馬を書くのも初めてだと言ってとても楽しそうだ。二人は絵馬を購入すると、用意されているペンで願い事を書いた。
悠叶は、迅鵺の願い事が気になるようで何をお願いしたのか聞いてくるが、悠叶の事を祈願しただなんて恥ずかしくて言えないようで“教えないです”と言うと、迅鵺も悠叶に聞く。
けれど、悠叶も仕返しというように“迅鵺さんが教えてくれないなら俺も教えません”と言い返す。
そんなくだらないやり取りをしながら、奉納場所に絵馬を掛けると、二人は手を繋いで神社を出て行った。
悠叶の絵馬には“迅鵺さんに貰った幸せを、今度は俺が返してあげられますように”と書かれていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
112 / 140