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最終章
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「─────実を言うと、目を覚まさなかった間、なんとなく自分の中で意識みたいなものがあったんです・・正直、あの時はこのまま目が覚めなくてもいいって思ってたんです。」
迅鵺の夢の話しを聞いて、そんな事を言う悠叶。
つい反射的に、後ろに居る悠叶を確認する為に迅鵺は体を捻らせた。
「あの時ね、何度も迅鵺さんの声が聞こえた気がしたんです。」
「────俺の声?」
目を覚まさなかった悠叶に、自分の声が聞こえるものなのかと不思議そうに首を傾げ、悠叶の目を見る迅鵺に、悠叶はフッと柔らかく微笑んで頷いた。
「はい。俺、あんなに酷いことしたのに、迅鵺さんがずっと俺のことを呼ぶんです。だから俺、いい加減逃げないで、目を覚まさないとって・・・」
悠叶は、迅鵺の頬を包み込むように手を添えて、迅鵺をとても清んだ瞳で見詰めた。
悠叶の唇が“俺にはあなただけです”と動くと、悠叶の視線から逃れられずにいる迅鵺に、そっと口付けをした。
「迅鵺さん、ありがとう。こんな俺を受け入れてくれて・・あなたに出逢ってから俺、初めて貰う幸せでいっぱいです。」
改まって照れ臭い事を言われて赤面しながらも、迅鵺は、しっかりと悠叶の方を向いて悠叶の頭を抱えるようにギュッと抱き締めた。
「お、俺だって、こんなに誰かを求めたのは初めてだ・・このむず痒い感じが幸せってことなら、俺も悠叶さんと同じ気持ちっすよ・・・」
“だから、これからは独りで悩むの禁止”
そう言って、今度は迅鵺から悠叶にキスをした。
迅鵺の静かだった寝室は、今とても温かで柔らかい空気に包まれている。
初めてこの寝室で襲われた時は、それこそ恐怖した迅鵺だったが、今では、きっとこれまでにした事もないような、愛しそうに悠叶を見詰める迅鵺の姿がある。
悠叶も、トラウマ全てが綺麗に無くなった訳ではないけれど、迅鵺と出逢って初めて触れる人の温かさに、狂おしい程までに戸惑ってしまうくらい、愛しい気持ちが溢れてくる想いだった。
お互いの温もりが、ちゃんと伝わってくる空間。
二人の間には、何よりも強い絆が出来たように思う。
「そういえば迅鵺さんっ!夢の中のキスに、ドキドキしたりしてたんですかっ!?」
いきなり思い出したように、何故かムッとしたような物言いで聞いてくる悠叶に、迅鵺はギクリと惚けたような反応を示す。
「ああ~っ!その顔!俺も段々と迅鵺さんのこと分かってきましたよ。ちょっとドキドキしちゃったんですね!?」
どうやら、覚えのない夢の中での出来事に嫉妬をしているようだ。
そんな悠叶に、迅鵺も思い出したように対抗する。
「そういえば、悠叶さんだって片付けろって言ったのに、写真そのまんまっしょ!?」
悠叶の部屋一面に、ズラリと貼られた迅鵺の写真の事を言う迅鵺だったが、悠叶は片付ける気はないようで、慌てて言い返す。
「あっ、あれはダメですっ!俺の宝物なんですからっ!」
「た、宝物っ!?はっ、恥ずかしいこと言うなっ!」
「恥ずかしくなんかないです!俺は迅鵺さんが好きってことなんですからっ!むしろ、これからも沢山撮りますよ!」
一度、言い合いを始めてしまった二人は、なかなか止まりそうになかったが、悠叶の言葉に迅鵺はピンと何か思い付いたような表情をすると、ある提案を持ち掛ける。
「悠叶さんっ!写真撮って下さいよっ!」
思いもよらない迅鵺の言葉に“撮らせて貰えるんですか?”と、拍子抜けしたように承諾した悠叶であった。
そして、迅鵺の提案はすぐに実現する事となる。
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