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まだまだ遠いい……
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ホント、イライラする…
賢史「お前馬鹿だろ…。
何がしたい?何が言いたい?お前が高いところでいつまでも女王様気取ってるから神が苦しむんだろ!泣いて別れたくないとか縋った割に同じこと繰り返してんのか!?」
マキ「…僕は、高いところになんていないよ」
賢史「じゃあ、汚れた自分は地の底から〝優しい百目鬼さん〟を見上げてるとでも言いたいのか?お前は馬鹿なのか、いや、馬鹿だろ。何故そこまで神を信じない。お前みたいにめんどくさい奴を神は持て余してる。俺が散々忠告してやったのに、それでもお前を選んだんだぞ、お前じゃなきゃダメだって、恋愛偏差値マイナスな頭絞ってお前のために何が出来るか、どうしたら笑っていられるか、あいつはいつもそればかり気にして、お前のために…。なのに、お前は神を怒らせて困らせて心配させて、挙句、神の愛情をちっとも信じないじゃないか」
さっきまで、何考えてるのか読めない表情をしてたが、何か可愛らしい仕草で、可哀想な困った顔して首を傾げたかと思ったら、何か考え込んだように握ったこぶしの人差し指の背を唇まで持ってきて俯いて瞬きを繰り返す。
マキ「…、あの…あのね…。みんな、僕か神さんを信じないって言うけど、それは違うよ。ただ、僕が神さんを100%信じてるっていう風には言えないだけで、きっと嘘になるから。でも、信じてないってことは絶対ない。神さんが嘘を言ってるってことになるから、僕は、神さんが嘘を言ってるとは思わない」
賢史「は?何言ってんだ?」
マキ「神さんを試すつもりはない、だけど、僕がこんな人間なんだってこと知って欲しいとは思ってる。僕って人間を受け入れてくれるのかなっていつも思っちゃう。でもそれは、神さんを疑ってるわけでも、試してるわけでもない」
賢史「なんか屁理屈に聞こえるが…」
マキ「…神さんが好きだよ、大好き。
だけど…、怖い…、また、終わりが来るんじゃないかって考えがよぎる事はある」
賢史「そんな…」
マキ「くだらない。賢史さんにとってはくだらないことだけど、神さんと一度終わってしまった事、神さんには大切にしたい人がいること、気にならないように努力はしても、あった事はなかった事にはならない。でも、神さんが僕を本当に大切にしてくれてる事知ってるよ、いっぱい努力してくれてる事も、僕を好きだと言ってくれる事も、神さんがどんな人か、どんなに頑張っちゃう人か知ってる」
賢史「…」
マキ「僕はちゃんと分かってる。神さんと一緒に居られることが幸せな事だって…、過去のどんな事も、今の幸せには勝てない。僕は今を大切にしたい。この首輪を外すつもりもないし、外せと言われても、外すつもりはないし、この首輪は僕のものだ……。この腕時計がまた壊されたって、粉々になったって、ネジ1個だって捨てたりしない。これは、神さんが僕にくれたもので、僕の大切なもの、だから、大切にしたい、壊れたりしないように…」
賢史「……、あー…、んー…、その、ちゃんとは理解してやれないけど、何となく分かった。ただよ、誰もお前の首輪を取り上げようなんて思ってない」
マキ「例え話だよ」
賢史「お前さ、ちゃんと神に言ったら?」
マキ「僕はちゃんと言ってるよ、毎日ちゃんと好きだっていっぱい言ってる」
賢史「そうじゃなくてさ、お前がゴチャゴチャしてんのは、単純に神に甘え足りないんじゃない?」
マキ「神さんは、充分すぎるほど甘やかしてくれ…」
賢史「お前が!甘えたいだけ甘えてみろって言ってんの」
マキ「…」
賢史「おいおい、そんな露骨に無理って顔すんなよ」
マキ「無責任な事言わないでよ。神さんは仕事で…」
賢史「忙しいから?何だよ、お前がどんな風に甘えたいか神に言えって言ってるだけだろ」
マキ「…」
賢史「だから、早いよ。無理って顔して睨むなよ」
マキ「むぅ…、賢史さんおバカさんなの?、神さんがどんな風に人のワガママ聞いちゃう優しすぎる人か知ってるくせに…」
おぉ、剥れてる剥れてる、こりゃ珍しい表情だな、女王様には無い表情…
賢史「だから、ワガママ聞かせてやりゃ良いじゃんか、神は聞きたがってんだから」
マキ「神さん忙しいんだよ!これ以上ワガママ言ったら体壊しちゃうよ!」
賢史「壊せば良いんだ、そうすればお前の望みも叶うだろ、その真っ白ライオンみたいにどこ行くにも一緒で、ずっと抱っこできて、そのヌイグルミじゃ出来ないエッチな事いっぱいしまくって抱きしめて貰えば良いじゃんか」
この時ほどマキの仮面がぶっ壊れたのを見た事なかった。
前見たのは悲しみ一色だったが、今目の前のマキの感情はとっ散らかった脳みそ丸出しの表情。
何てこと言うんだって怒ったかと思ったら、ライオンのこと言われて、驚きと羞恥に赤くなり、そんな事良いわけ無いって、本当はしたいって、でもダメだろって複雑な顔して困って、エッチしろって聞いた瞬間びっくりするぐらい怖い顔して睨んできたかと思ったら、その瞳は涙目で、本当はそうしたいけど、神さんがSEX嫌いなの知ってんじゃんって責めるようだった。
賢史「ハハッ、そんな顔見たの初めてだなぁ」
思わず笑ったら、益々ブスッとしてほっぺを膨らませる。これがマキなんだと思ったら、益々可笑しくて…
賢史「あははっ、悪りぃ悪りぃ、からかってはいねぇよ」
マキ「ニヤニヤしてる人に言われてもね」
賢史「いや、てっきり、胡散臭い顔していつもみたいに妖艶なつかみどころの無い表情で笑うんだと思ったからよ」
マキ「…」
賢史「…あー…、ゴホン。…なぁマキ、お前が色々不安になったりするのは分かるぜ、なんせ神は、恋愛偏差値小学生だから、お前が言って欲しい事やって欲しい事全部はスマートに出来ないだろう」
マキ「違う、百目鬼さんは…」
賢史「うるさいうるさい、人の話はちゃんと聞けよ。それに、神がちゃんとしてるって言うなら、尚更、ワガママ言えば良いじゃんか」
マキ「…僕は」
賢史「神のくれた物肌身離さずにして、そんなライオン持ち歩いてウロウロして眠れないでいるなら、ホンモノに抱きついて、エロい事いっぱいして腹いっぱいにしてろよ」
マキ「…これは…」
マキの言いたい事わからないわけじゃない。
その複雑な感情には覚えがある。
だが、でもでもだってを繰り返して、せっかく幸せな時間があるのに、無駄にジタバタしてるように見えるんだよ。
それが、本人じゃなくて第三者だから、他人事だからってなるのも分からなくはないけど、お前だってそうじゃんか、第三者の時は、自信たっぷり説教して、くるじゃんか…
分かるよ。
分かってんだよ、俺だって。
白黒はっきりつかない、世の中、そんな事ばっかりだ。
賢史「なぁ、頼むよ。あいつうざいんだよ、マキがマキがってさ、最近結構キてるぜ。最近は歳の差まで気にしだして、若作りファンションの本まで読み漁ってるのよ、お前がニャンニャンしてやらねぇから、おっさんは寂しがってるわけよ」
マキ「え?」
愛されてる事にだけ、鈍感なマキ。
賢史「……なぁ、俺も認めるからさ…」
マキ「……」
愛されることを望みながら、愛されてる事にだけ臆病で…
賢史「まぁ、俺はお前ほど重症じゃ無いけど、…まぁ、誤魔化してはいたな…。一夜の楽しさがあれば良いってさ…」
不幸慣れした心には、幸せな気持ちから、いつ落ちるとも分からない浮遊感に怯えて…
マキ「…フラフラするの辞める?」
それは俺のセリフだ。
女王様は、…ただじゃ反省しないってか。
賢史「おかしいな、俺がお前に言いたいセリフなんだがな」
マキ「ふふ♪」
何を満足げに笑ってんだか。
賢史「だがな、フラフラしなくなったって直ぐに恋人できるわけじゃ無いんだぞ。お前は相手がいるんだから、今直ぐ何とかしろよ」
マキ「賢史さん、モテるんでしょ♪良い人直ぐ見つかるよ♪、灯台下暗し的に♪」
賢史「…うわぁー、嫌な含笑いだなぁ…」
マキ「ふふっ♪嫌だなぁ♪嬉しくて笑ってるんだよ♪」
賢史「とりあえず。帰るって言うなら送る。そんでお前は神が帰ってきたら、思いっきりお仕置きされて、思いっきり甘えろ。そしたら、俺もそのあと神に大人しく叱られてやる」
マキ「心配性だなぁ」
賢史「うるせー、お前が変な虫取りホイホイなんだからしょうがないだろ。緋色の事、気を付けないと神の地雷を踏むぞ」
マキ「んー…、あれは、僕もよく分からないんだよねぇ。賢史さんみたいに下心は感じないし…」
賢史「苦労してお前の味方してやったのに、そんなふざけた口効くのか?、とにかく、緋色は馬鹿じゃない、下心は無い風に見えても何か思う事があるのは事実だろ、だからお前と接点を持ちたがるんだ」
マキ「…、体で払えって言った事なら、絵のモデルを頼まれてるだけだよ」
賢史「芸術的興味だけか?」
マキ「んー…、微妙」
賢史「やっぱり」
マキ「単純に、彼の情報が足らないんだよね。でも、奏一さんが、僕に緋色さんを紹介した事を考えると、悪い人じゃないと思うんだよ。百目鬼さんの事を含んでも…」
賢史「高霧兄と高霧弟の緋色は別人間だぞ」
マキ「うん、ちゃんとわかってるよ。
……賢史さん大変だね」
賢史「ホントだよ、殆どお前のせいだよ」
マキ「賢史さん、ホント百目鬼さんのこと大好きだよね♪、僕、賢史さんには負けないよ♪」
賢史「そのアホな事言う口を閉じろ」
マキ「んふふ♪」
賢史「お前、少しは反省しろよ」
マキ「ちゃんと良い子にしてるよ♪」
賢史「してないんだよ、ちっともな…」
相変わらず、いたずらっ子みたいに笑うマキは、俺に怒られて、真っ白なライオンを抱きしめながらちょっとだけほっぺを膨らませていじけてみせた。
その顔、増えた表情は、やっぱりちょっと笑っちまう。
数時間後、マキと神のどちらにも連絡が取れなくなる。
あぁ、お仕置き中かと思いながら、俺は仕事に戻り、いつまでも神から連絡がないから、仕事終わりに菫ママの店に顔を出し、何故か事情を知ってる菫ママに「賢史ちゃんて馬鹿よね」なんて怒られる。
神は相変わらずマキ一色で馬鹿だし、マキはマキで言う事聞かないやんちゃ女王だし、トラブルは何処からともなく2人を巻き込んで、毎回毎回ハラハラさせられて、呆れかえって、こうして菫ママの店で髭面のオカマたちの注ぐまずい酒を飲み、やたらうまい菫ママの飯を食いながら菫ママに説教される事の繰り返し…
ホント…、疲れるわ…
…
だけど、
…
何故だか…
笑えてくる…
迷子の猛獣も
泣き崩れる野良猫も
不安定ながら寄り添って微笑ましくて…
何だか笑えてくる…
ちゃんと、目に見えて劇的には変わらないけど、僅かながらでもほんの少しだったとしても、ハッキリした違いがある…
ちゃんと…、進めてる…
菫ママ「やだ、賢史ちゃん、気持ち悪い笑い方しないでよ」
賢史「ハハッ、いやぁー、迷子の迷子の子猫ちゃんも子犬ちゃんも、お巡りさんの助けはいらなくなったんだなぁって思ってさ」
菫ママ「あら、お巡りさんは、一緒になって困ってただけじゃない?」
賢史「まぁ、そうだけどさ…」
菫ママ「最近の神は、ホント、賢史ちゃんの格好の餌食よね」
賢史「恋愛偏差値小学生以下の馬鹿だからな」
菫ママ「…やっと、馬鹿になったのね」
賢史「…あぁ……やっとな…。」
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