アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
アルバムをなぞる指先の決断41
-
おばあちゃんは、苦い過去に涙しながら、涙の止まらない僕を見て、神のためにありがとうとくしゃりと微笑む。
その安堵した表情に今までの神さんとの思い出が溢れ出た。
『マキ』
僕は神さんを、凶暴なほど寂しい人だと思ってた。
愛に飢え、優しい気持ちを持っているのにそれをうまく表現できない。そんな自分を変えようと努力して努力して、でもうまくいかなくて、それでも変化を諦めない頑張り屋さんだと…
自分のセクシャリティーに悩み、戦い、苦しんで前進しようとする人だと…
『バカが…、喰い殺されるぞ』
『食べて、僕を百目鬼さんのものにして』
『俺は、優しくしたいんだ…、大切な人を大事にできる人間になりたい…』
『セックスは悪いことじゃないよ。それに、僕は壊れたりしない、エッチで丈夫なんだよ♪』
『クソビッチが』
『フフフ♪百目鬼さん、愛し方を教えてあげる。情熱的なセックスは、暴力なんかじゃない。百目鬼さんは大切な人をちゃんと優しく愛せる人だよ』
『お前は、俺を分かってない。泣いて後悔することになるぞ』
『啼かして♪後悔なんかしない。僕はクソビッチだから♪』
『…ッ、バカが…』
今まで見えていたものの角度がほんの少し変わっただけで、その言葉たちの意味が変わる。
深みも、その裏側も…
『泣いて縋って俺が好きだと言わせたくて、大切な人を泣かして苦しめる。そんなことしたくないのに、大事にすればするほど、好きになればなるほど、捉えて閉じ込めて追い詰めて、泣きながら俺を好きだと言わせたい。好きな人の泣いてる姿に興奮するんだ、俺はそういう最低な人間なんだ』
神さんの言葉、神さんの行動、神さんの表情ひとつまでも、溢れるその思い出は、今の自分には全て、今まで気がつかなかった意味が隠れてた。
僕と神さんがどこかすれ違う原因、僕と神さんがどこか似てる理由…、惹かれあって離れず、足りないものを持っているただ1人の人、なのにどこか噛み合わない訳…
僕が神さんを求め、神さんが僕を求めた…
神さんは凶暴なほど執着するのに、それが壊れてしまうと恐れて怯えてばかり…
『マキ、俺はいつか、お前を壊しそうで怖い…』
『僕は壊れないよ。絶対大丈夫』
『泣かしたくないのに泣かしちまう。大事にしたいのに…』
『僕は幸せだよ、神さんに大事にされて、こうして隣にいるだけで幸せだよ』
『…お前の幸せは小さすぎてあてにならない』
『なにそれ!』
『お前の願いはいつもちっぽけすぎるんだよ、もっと我儘言ってみろ、もっと贅沢になれ、もっと思ってること全部言ってみろ』
『僕は我儘言ってるし、贅沢してるよ。毎日神さんの作ったご飯食べて、毎日神さんに甘やかされて、毎日神さんと一緒に寝てるもん』
『それは我儘でも贅沢でもない、俺がやりたくてやってんだ、他になんかねーのか』
『じゃあ、また依頼手伝わせて♪』
『ダメだ!』
『我儘言えって言ったじゃん』
『事務仕事は許してやってんだろーが』
『えー、だって、神さん事務所にあんまりいないじゃん。もう危ないことはしないし約束は守るからぁ』
『ダメだ』
『我儘言えって言ってそれはないんじゃない?』
『それとこれとは別問題だ』
『…じゃあいいじゃん、僕は神さんの隣にいられれば幸せ、僕は我儘が過ぎる。それでいいじゃん』
『ダメだろ!』
『じゃあ依頼てつ…』
『ダメだ!』
『…ちぇっ。依頼お手伝いして神さんともっと一緒にいたかったのに…』
『ッ…。……マ』
『じゃあ♪毎晩エッチしよ♪』
『…。ダメだ』
『えー、またダメなのぉ?』
『…もっと普通のにしろ』
『……、普通だもん…』
『毎日なんて普通じゃないだろ』
『毎日したいもん』
『…お前の体が持たない』
『違う…、僕は壊れたりしないもん』
『なに言ってんだ。動けなくなるくせに』
『それは、神さんが上手いから…』
『学校あるだろ、学生は勉強しろ』
『……分かった。…
…神さんは、僕相手じゃ毎日勃たないだ…』
『はあぁぁー!?なんでそうなる!』
『じゃあ毎日できるぅ♡?』
『ッ!!。その手には乗らないぞ!!』
『ちぇっ…ケチ』
『はぁ…、お前はいつになったら素直になるんだ』
『僕は素直だよー、神さんといられて幸せ。
そんなことばっかり言って神さんはどうなの?僕といられて嬉しくないの?』
『…俺は…、お前を大事にしたいんだ』
『神さん自信なさすぎだし、全然僕を信じてくれてないし、素直じゃないよね。僕には素直になれなれ言うのに…』
『俺はちゃんと言ってるぞ、お前を離す気は無い、大事にしたいんだ』
『…だから、僕は離れないし大事にされてるし幸せだよ』
『…、もっといろんなお前を見たいんだ。俺は、お前にした約束を守りたい』
『…約束…』
『その時が来たら、お前が心から笑えるように…』
『攫ってくれるって言ったこと?』
『俺は誓ったんだ』
『…神さん、忘れてない?』
『ん?』
『…僕も、約束したんだよ』
『…』
『神さんがくれた言葉、僕だってあげたい
〝神さんが産まれてきたのは、僕と出会うためだったって思ってもらえるようにする〟って。
僕だって、神さんを守りたい、僕だって神さんを幸せにしたい。ねぇ、神さん。僕も約束したし誓ったよ、あの日、星空の下で、僕はちゃんと返事したよ。神さんと一緒にいたいって、神さんとずっと歩いて行くって、同じ時を刻んで離れないで歩んで行くって』
『……』
あの時、僕は知らなかった。
神さんが嬉しそうなのに複雑な表情をした意味を…
神さんがなぜ、あそこまで頑なに理想にこだわっていたのかも…
神さん…
今すぐ会いたい
今ならあなたの一番欲しいものを全部あげられる
神さんがこだわってた普通の意味がやっと分かった。
神さんの欲しい理想が…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
147 / 170