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空白のアルバム=百目鬼4=
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百目鬼「うわっ!す、すんません!」
慌てて手を離したが、俺自身びっくりだ。掴んだのは俺の意思じゃない。俺は何もやってない、何が起こったかサッパリわからない、でも確かに俺の手が先生の腕掴んでた、無意識だ、完全に無意識だ、俺の意思じゃない、俺じゃない。
先生「…連れ出すんだから、服を着替えさせないと」
百目鬼「…」
分かってる。この人は普通のことを言ってる。なのに、なぜか、先生の一言一言に胸が騒つく。
独特の雰囲気のせいか?さっき変なふうに感じたからか、やたらなんでもそっちの想像がチラついて…
先生「私が全部服を脱がすから、新しい服を出しといてもらえる?」
全部ぬが…
百目鬼「…む、無理に動かさない方がいいんじゃね?こいつ限界だし、せっかく眠ってるし、外はまだ雪降ってるし、汗かいてるなら熱も上がってるかもだし、ってか、風邪なんだろ?ただの風邪、薬飲まして寝かしときゃいいんだろ?」
何早口で喋ってんの俺…
先生「…まぁ、可哀想ですが仕方ないです。百目鬼さんも大変ですし、ご迷惑でしょ。私が連れて帰って、お世話しますよ」
先生の声が、仕草が、どうしても意味深に聞こえてゾワゾワよく分からない感情がお腹のあたりに溜まっていく。
胸が騒つく、ひんやりするような、ビリビリするような、何故か否定的なもんがドロドロ広がってく
百目鬼「っ…、風邪なら…温かくして寝かしといた方がいんじゃね?…ばあちゃんが言ってたし、それに、外ヤバイくらい寒ぃし…」
先生「…、マキの相手はとても大変だったでしょ?」
百目鬼「まぁ…」
眩しいし、懐いてくるし、一生懸命だし、どうしていいかわかんねーし、綺麗すぎて壊しちまいそうだし、迫ってくるし、唇柔ら……
ー グハッッ
先生「そんなにお嫌なら無理なさらなくても、私がマキを預かりますからゆっくり療養してください。忽那さんには私からうまく言っておきますよ」
= 『……………!!』=
百目鬼「は?いやいや、嫌だなんて、ちげーし!。やめろよ、さっきっから。俺は、こいつに助けてもらってんだ、感謝してる。そりゃ、困ることもあるけど、そうゆうんじゃねーし。大丈夫だっつってんだろ」
先生「…分かりました。では、何かあったらココに電話してください」
そう言って先生は、電話番号が書いてあるメモを置いて帰ろうとした。
百目鬼「あの!」
先生「はい」
百目鬼「薬、これ、いつ飲ますやつなの?」
先生「あぁ、今晩はもう飲まなくて大丈夫です」
百目鬼「えっ、そうなの?」
先生「…、今から飲んでも間に合いませんから」
百目鬼「は?それってマズくね?」
先生「…〝少し〟、〝魘されると思います〟が、マキの落ち度なのであまり気になさらないで、ただ、あまりに辛そうなら〝優しく撫でてあげればそのうち収まりますので〟」
え゛っ?
主治医なのに冷たくねぇ?落ち度って、睡眠薬で眠ってるんだから飲み忘れとかじゃないじゃん。
魘される?それってマジで大丈夫な訳?
最後まで、何考えてるか分からない先生は、玄関で深々と頭を下げて丁寧に挨拶して帰った。
大雪の中、通常の倍かけてでも診察に来たってことは、それなりに心配だったからだろうに。それに、マキに触れる時のあの空気、絶対何かしらの感情があったのに、何故、落ち度なんて冷たく言ったのか…、…、呆れてたのか?そういえば、忽那も奏一も、こうなるって分かってたみたいな口ぶりだった。薬があるってことは、先生はもうとうに知ってんだよな、茉爲宮の体調が悪いの…。
でもやっぱ、あんな言い方ねーよな。
俺の爺ちゃんだってばあちゃんが具合悪くなったら「邪魔」だの「迷惑」だの怒鳴るけど、それは、ばあちゃんがそうでも言わないと店に出てくるからで…。…ってなると、やっぱ先生も茉爲宮が心配が故にか?…いや、本人に聞こえないのにあんなこと言っても意味なくね?
…あぁ、ほら、やっぱ俺にはこうゆうの向かないんだよ。自分のことすら分かんねぇーのに人の気持ちを知ろうなんて…
無理無理…
だから、無理に考えるのはやめた。
ただでさえ考えなきゃいけないことだらけなんだけど、今は、茉爲宮の看病に集中しよう。
茉爲宮は、やはり熱が上がってるみたいで、額にじっとりと汗をかいていた。
本当は少し拭いてあげたりした方がいいに違いないが、先生が茉爲宮に触れた時のことを思い出してしまって、冷たいタオルをおでこに乗せてやるので精一杯だった。
茉爲宮は男だ。
俺は男とどうにかなりないなんて思ってないし、ましてや、茉爲宮をどうこうしたいわけじゃない。
念仏のように唱えても、一度植えつけられた妙な考えは膨らむし、河原での出来事が脳裏に浮かぶ。
ダメだダメだと思えば思うほど、気がつけば、それしか考えてないことに気がつく。
百目鬼「はぁ…、マジで…勘弁してくれ…」
気がつけば、先生が居なくなって2時間も経ってた…。
百目鬼「疲れた…、もう寝よう…。あっ、最後にもう一回タオル替えてから…」
緩くなってしまったタオルを新しいのに替え、寝て全てを忘れようと思った。
マキ「…ん…」
百目鬼「!!」
茉爲宮を起こしてしまったって硬直した。薄暗い部屋の中、茉爲宮が起き上がる様子はない。焦ってる俺の耳に、小さく掠れたつぶやきが聞こえた。
マキ「…じ…ん…さん…」
……。
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