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期待
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「はぁ。」
背もたれに背を預けると、椅子がギッ、と軋んだ。
目の前に積み重なった資料を横目で見た後、視線を生徒会室の扉へと向けた。
昨日の放課後、新がここへやってきた。深刻そうな顔をしてたから、何かあったのかな?って思ったけど、悩みを聞いてほしいとかそういうのじゃなくて、新が言ったのは今日から日野の勉強会に参加させてほしいという申し出だった。
「どうしよう……」
勉強会、か。
そんな大した事をしているわけじゃないし、教える対象は日野だけだし、僕一人でも十分間に合ってるんだけど……。せっかく新が申し出てくれたから、僕は断れずそのままお願いしてしまった。
困ってる事あったらなんでも言って下さいって言われちゃったけど、僕、困ってる様に見えたのかな?それとも最近何か不安を感じさせるような態度を取ってしまったのだろうか。
僕とした事が、最近はやけにボケっとしてしまう事が多くなった気がする。
日野に会ったら、体が変に疼いて、彼が僕の名前を呼ぶ度に……何故かイラッと来る。
へにょへにょした笑顔を向けられ、日野は僕を抱いた日の事については何も口にせず、相変わらず勉強は真面目に受けてる。
そう。僕だけが変に意識してしまってる気がしてそれがとても不愉快なんだ。
日野は、勉強の事以外では僕に話し掛けて来なくなった。勉強が終わればすぐ教室に戻ってしまうし、あの日聞けなかった事を聞こうと引き止めようとしても、彼は笑って誤魔化して結局何も聞けないままでいる。
駄目だ。モヤモヤする。イライラする。
「……っ…」
あの日の事を思い出すと、体が疼いて、変になりそうになる。
「……日野」
彼の名前を呟くと、どうしようもないくらいムカムカしてくる。もう訳がわからない。僕はどうかしてしまったのか?
嫌いな人物の名前を呟くだなんて。気持ち悪いにも程がある。
僕は、まだ新が好きなんだ。
新と似ても似つかない日野なんかを好きになるなんて絶対ありえない。
「失礼します。」
「………」
頭を抱えていると、突然生徒会室の扉が開いた。
ガラリと開かれた扉の方を見ると、そこには新の姿があった。
笑って、中へと入ってくる彼を見ると、心がほんわかとする……
「おはようございます。」
……はずだったのに。
「おはよう……新」
僕は、日野が先に入って来ることを
少しでも期待してしまった。
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