アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
apr.24.2017 ハルの心配
-
「エリザベスは・・・一人で納得すればいいから・・・羨ましいな。」
物語は緊迫しているというのにハルの言う「いい」とは程遠い。エリザベスって誰?あ~それは海外ドラマの主人公でね、彼女色々フクザツなのよ。
「納得ってなに?」
ハルはびっくりした顔を俺に向けた。言葉にしているなんて思っていなかった、そんな顔。
「ハルは何を納得してないの?」
「・・・あ・・いえ。」
「無理には聞かないけどね。俺もドツボにハマっていた時は誰とも共有したくなかったし。」
ハルは困った顔をした。あら?違った?
「どした~~ハル。」
ギュウと手を握る。ハルは握り返すこともなく俺のされるがまま。心に気持ちがいっているから動作に現れない、そんな感じ。
「心配事?」
覗き込むとハルがすいっと目を逸らせる。あららら、らしくないね。
「俺に嘘ついてんの?」
はっとした顔が俺に向けられる。わかっているよ、嘘ついて後ろめたいって顔じゃないしね。この部屋には俺とハルしかいない。ハルが「なんでもありません。」と言えば「そうか。」と返すことに決めていた。でもね「なんでもありません。」が3回続いたら「正座しろ!」じゃないけど、ちゃんと話してくれる?って聞くと思うんだ。それまでは無理強いはしたくない。
「嘘ではなくて。」
「うん。」
「あの・・・今日電話がきて。」
まさか昔の何かじゃあるまいな!
「誰から?」
「・・・かあさんから。」
広美さんなら何も問題ないでしょ?どうしたハル。
ハルはふう~のため息。
「どうした、ハル?」
ハルは何かを堪えるようにグウと唇を噛みしめたあとふううううと深い深呼吸をした。なに?ハル泣きそうなの?
よくわからないまま、抱き寄せて抱え込む。背中と頭に腕を回してギュウと力をこめる。
「・・・ミネさん?」
「ん?」
「ミネさんのご両親はどう思うのかなって・・・」
あ・・・そこか。
「両親は浮かれて電話してきたりメール送ってくる。そのたびに・・・僕はどうしたらいいのかなって考えて。ミネさんがゲイでしたっていうならここまで思いません、でも・・違うし。」
「北川さんと広美さんは浮かれてるんだ。」
「ええ、恥ずかしいくらいに。というかそこじゃないです、今僕が言いたいのは。」
ハルの両頬に手を添えて上を向かせてようやくハルの顔が見えた。
「ハ~~ル、下みるの禁止。」
「ううう。」
「ハル、何を心配してるの?俺の親の反応?」
ハルが俺の袖口をギュウと握ったあと、ぽつぽつ言葉にし始める。
「たぶんスタッフとしては頑張っているって言われるかも。でも・・・同居人としては失格です。寮生でもなんでもないし、お嫁さんの障害でしかないし・・・だから、もし・・・」
「もし?」
「ミネさんの・・色々が変わったらすぐ言ってください。」
「あ?」
「僕はその時・・・考えます。備えて貯金するようにしたし。」
「ああ?」
「・・・ミネさん。僕なりに怖いです。」
「ハル?」
「北川家の浮かれっぷりに呆れて、やれやれ~なんて言っている自分に気が付いたとき怖ろしくなります。ミネさんの家族は僕なんかが一緒って・・・納得できないでしょ?」
なんか・・・って久しぶりに言った・・な。
「言われる前にそう言うのか、ハルは。」
「・・・言われたあとより・・・ましです。」
ハルの身体が震え始める。あ~なんだよ、ずっとこれを気に病んで、困って、悩んで・・・何回悲しくなったのかな。そもそもハルは悲しい結果しか思いつかないのかな?
あ・・・高校生の記憶と経験値か。
「こればかりはわからんよ、俺も。」
「・・・はい。」
「でもこれだけはいっておく、ハルを恥じる気持ちは一切ない。男で男を好きになった俺の心にだって恥じる気はないよ。ハルが大事、やましいことはない!この二つの主張だけで充分じゃないの?」
「ミネさん・・・それご両親に言えるのですか?」
「場合によっては言う。」
「え?」
「10年後もハルとラブラブだったらね。認めるしかないって思うでしょ。」
「10年・・・ですか?」
「あははは、現在の意気込みではね30年くらいいけそうよ?にゃは。」
本当はもっとちゃんとした答えをハルにあげたい。でもな~俺自身がわからないのよね。ハルの事を言った時の両親の反応がさ。
俺とハルの関係は始まってから少ししかたっていない。でもギッシリ詰まった時間の積み重ねだったりする。そして続けていく・・・違うな・・・続いてくことが俺には当たり前に思える。
「ずっと傍にいてくれます?」
「ん・・・ハルがいなくなったら困る。盛大に困る。」
ほんとね、それ常々思うの。盛大に困るよ、今となっては。親に猛烈に反対されたとしても大丈夫だと考えている。納得できなくても最終的には認めてくれると信じているから。
だってさ、ハルと過ごす大事で暖かい時間をね・・・今まで誰もくれなかった。俺だってハルに感じるような想いを誰にも持てなかった。
間違いなく俺は今幸せで充実している。男女だから幸せが成立するってことじゃないのよね。
それを親に伝えるつもり、その時がきたら。
「ミネさん。」
「ん?なに?」
「・・・呼んだ・・だけです。おやすみなさい、。」
「ハル?」
「・・・はい。」
「俺は俺、ハルはハル。二人とも男同士。でもね・・・誰が何を言ってもハルとの時間を手放すつもりはない。不安になったら思い出して。俺はハルと一緒にいる。離れる気はないって事をね。」
ハルのことを想う気持ちに比べたら、俺の言葉は随分薄っぺらい。でもハルが思い出して踏みとどまるには言葉が必要だ。
もっと・・・心の中に深く埋まる様な事言ってやりたいのにな・・・。
「もっと・・ギュウってしてください。」
言葉の代わりに、力一杯ハルを抱きしめた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
397 / 474