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別離【少年視点】
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それを最後に、赤司くんの意識がなくなった。
倒れ、魂の姿になってしまった赤司くんをそっと拾う。
前世の僕が……鬼であり、誠凛の長と呼ばれた鬼が、僕の体から離れた。
「すみません。長いこと、キミの体を乗っ取ってしまいましたね」
「全くです。僕はただの人間なのに」
ごめんなさい、と困ったように笑う前世の僕はとても儚くて美しかった。
「「黒子テツヤ」くん。征十郎くんと共に、扉を出てください。キミの異世界迷子生活は、ここで終わりです」
「君はどうするんですか?「黒子テツヤ」さん」
僕の問いに彼は笑っていた。笑顔で彼は言った。
「ここで消えます。過去のボクはただの荷物ですから」
「は?」
「誰かが、この扉を支えなければなりません。今の征十郎くんに、それは不可能です」
彼が何を言おうとしているのか、僕にはよく分かった。さすが前世の僕だ。考える事が似ている。
「君は、ここで扉を支えながら消える。そういうつもりですよね」
「そうです。流石ですね、ボクの生まれ変わり」
僕達はそれ以上何も言わずに、ただ手を合わせた。
姿も何もかも。ほとんどそっくりで、まるで鏡を見ているようだった。
「さようなら、未来のボク。キミが幸せそうで良かった」
「さようなら、過去の僕。貴方に会えて良かったと心から思います」
僕は手の中の赤司くんを大事に包んだ。まだ、間に合う。妖力を一気に消費したせいで小さな魂になってしまっているけれど、数年あれば元に戻るはずだ。
扉の方へと向かう。最後に、後ろを向いた。過去の僕が笑顔で僕を見ていた。
その笑顔を見ながら、僕は後ろに一歩下がった。一歩、また一歩。五歩くらいで扉をくぐってしまったらしく、あの異世界は消えてしまった。
「テツヤ、おかえり」
アレックスさんが、僕に声をかけた。
「ただいま、戻りました」
アレックスさんは手に持っている魂を僕に渡した。二つの魂が一つになった。
「……これが、「赤司くん」なんですね」
僕が言うと、アレックスさんが頷いた。
「その通りだ。赤司征十郎は、元々兄弟だった。同じ名を付けられたことで融合し、二つは完全に一人となった」
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