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未来を夢見て【誠凛の長視点】
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笑顔で彼を見送った後、扉を閉じた。やはり、少し疲れますね。
揺れる大地を感じながら、屋敷を歩く。
砕かれた魂の欠片を最後の妖力で集めながら、あの部屋にたどり着いた。
凍りついた、ボクを見たままの若様。
「ごめんなさい、若様」
ボクは謝罪を口にしながら若様を抱き締めた。魂の欠片がボクの周りに散らばった。まるで星のように綺麗だ。
彼の中でずっと、この日が来ることを予感していた。
今日だと思ったその日。ボクは妖力を使って桜を利用し、時を止めた。
そして彼をこの世界へ迷い込ませた。全ては滅ぶこの世界に置いてきた彼らを助けたかったから。
生まれ変わったボクと笑う彼らを見た時、ここで終わらせるべきじゃないと思った。バスケというスポーツで繋がり、楽しそうに笑う彼ら。
それは、この世界で夢見ていた「平和」だったはずだ。
「……ああ」
そんな事を考えていると、ボクの角が消えた。自分に妖力が感じられない。
若様が、だんだんと動き出していく。ゆっくりと。
「黒子……」
「……無力な人間に、戻ってしまいましたね」
ボクは赤司くんの妖力を貰って出来た鬼。膨大な妖力で今まで鬼として生きてきたが、魂の奥底ではただの人間。
ここまで尽きることはなかなか無かったけれど、あの扉のせいで赤司くんの妖力は完全にボクの中から消えてしまったのだろう。
「若様、ごめんなさい。もうすぐこの世界は消えてしまうでしょう。でも、貴方を逃がす事はもう出来ません。
こんな酷いボクと、この世界で心中してくれますか?」
若様にそう言うと、若様は頭をガシガシと掻いた。昔の若様なら有り得ないほど粗雑な仕草で。
「分かった。私の目的は、元々お前を取り戻す事だったからな」
「ありがとうございます」
未来は、時を止めたあの世界はまた動き出し始めただろう。
ボクに幸せな未来を見せてくれたあの世界は。
ボクを安心させてくれた未来のボクは。
火神くん、ごめんなさい。
ボクはこの世界と共に消えます。出来ればボクが、ボクが君の隣で笑いたかった。
せめて、生まれ変わったボクとキミが笑い合う未来を夢見ることにします。
その後、ボクは世界ごと消えた。
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