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step up
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そのままずっと直輝に抱きしめられていたいがそうもいかない。
徐々に思考がクリアになってくると、どこでやらかしてしまったのか思い出す。青ざめて部屋を換気して証拠を隠滅している俺とは真逆に直輝はベタベタと背中をくっついてきて鬱陶しい。
「馬鹿! お前も動け!」
「えーどうせもう誰も来ないよ?」
「そうじゃなくて、涼夏だって後から来るだろうし」
「俺に抱かれてすぐ元カノの名前言うのって酷い」
「っあのさ、そういうんじゃないって!」
「知ってるよ」
しくしく泣き真似をした直輝が手から顔を出して舌を出す。
少しでも罪悪感を抱いた俺は馬鹿なのだろうか。
肩を落として頭の中から直輝を追い出すと、手を取られた。
「悪かったよ。俺がやるから、祥ちゃんは座ってて」
「いいよ」
「俺がやるから、ね?」
「……あ、ありがとう」
モジモジしながらだが素直にお礼をいえた。
最近の俺は少しばかり素直になったと思う。今までの態度があまりにも酷かったともいえるが。
テキパキと動く直輝をぼーとみる。
まるで何もいやらしいことなんてしていなかったような、爽やかな姿。直輝はどこから見ても美しい。高い鼻梁に長い首。くっきりとしている顎のラインから汗が滴る姿を見るのが俺は密かに好きだった。
思わずさっきまでの男の顔をした直輝を思い返してしまって赤面してしまう。堪らず腕に顔を押し付けて呻くと、直輝が俺に向かって「や〜らしい」と言葉を投げつけてきた。そんなもの無視だ。
煩い直輝を横目に俺も帰り支度を整えると、二人で一緒に出口へ向かった。
涼夏からはメッセージが入っていた。
それは多分、アレだと思う。察してもらったという事だ。次からどんな顔をして会えばいいのか分からなくて、八つ当たり気味に直輝を責めると彼は嬉しげに満足げに微笑んだ。
これも全て計算のうちなのだとしたら、かなり怖いのだけど、それに慣れてしまった俺がいる。
ダラダラと直輝と話しながら歩いていると、背後から呼び止められた。
振り返った先には怜さんと、コンテストの途中に質問をしてきた海外のアーティストがいた。
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