アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夢の時間、光るキス
-
「最後に何乗る?」
「最後はアレがいい」
パレードの途中、少しだけアトラクションの列は人が少ない。
直輝に聞かれて直ぐに思いついたのはここに来た時から絶対乗りたかったもの。
「どれ?」
「観覧車!」
「じゃあ行こう」
「うん」
小さな箱が沢山付いて大きな円がグルグルと回ってる様子は遠くから見て可愛らしい。
やっぱり観覧車も人の列が少なくて案外直ぐに乗れた。
中は四人か五人程が入れる広さで、直輝とは向かいあって座った。
「夜に絶対乗るって決めてたんだ」
「へー、今の時間は確かに一番綺麗かもな」
「うん」
ゆっくりとしたペースで徐々に地上から上がる。小さい頃の記憶に、顔も上手く思い出せないお父さんとお母さんと、まだ小さな陽と四人でここの遊園地でこの観覧車に乗ったんだ。
もう遠い遠い記憶だけど、乗れば寂しくなるから他の友達と来た時は乗らなかった。
だから、直輝と乗るって決めたのは直輝に傍に居て欲しい勝手な俺の願い。
「綺麗だね」
「だな」
高くなればなるほど細かな電飾や、カラフルな飾り付けが小さな小さな光の粒に変わってキラキラと七色に輝いていた。
「あ! 見て見て直輝、お城がこんなに近いよ!」
「ん? ああ本当だな」
「ちゃんと外見てる?!」
「見てるよ」
窓に向けていた顔を直輝の方へ振り返ってドキッとした。窓の縁に頬杖ついた直輝が優しい目をして俺を見ていたから。
少しも窓なんか見てないのはバレバレで恥ずかしくなって慌てて目を逸らそうとした時おいでと膝の上を指さしてくる。
「やだよ」
「おいで、祥」
「っ、やだって……」
「なんで?」
「恥ずかしいから……っ」
「そんなの今更だろ」
「あっ、ちょ……!」
ぷいっとそっぽを向いて窓の外を見ようとしたのにそれは出来なかった。
直輝に腕を引かれてドタバタしながら膝の上に向き合って倒れ込む。
掴まれた手首は離されて、でも直ぐに手のひらを合わせたまま指が絡み合うと、強く繋がれた手。
心臓はドキドキと高鳴って、キラキラ光っている直輝の瞳に見つめられるともうそれだけで溶けそう。
「今日楽しかった?」
「……うん」
「良かった」
「直輝は……?」
「俺?」
「うん」
「ずっと笑ってる祥見れて幸せだったよ」
「ッ、恥ずかしいこと言うな……!」
「恥ずかしくないもっと言っていい?」
「やだっ」
「好き」
「やだってば」
「祥〜大好き〜」
「な、直輝ッ」
片方の手を繋いだまま空いてる腕を背中に回して直輝が抱きついてくる。
ふわりと鼻をくすぐる直輝の香りに、胸がぎゅうっとした。
直輝の匂いが好きだなんて少し変態臭いかな……。クンクンと髪に顔を埋めていたら不意に声をかけられて心臓が飛び跳ねる。
「なぁ、祥」
「へ?!」
「祥の事好き」
「〜〜っ、だ、だから」
「違うよ。 からかってるんじゃないんだ、だから聞いて」
「……う、ん」
微笑んだ直輝に優しく頭を撫でられて、小さく頷くと、もう一度強く抱きしめられた。
さっきよりも近づいた距離に感じる直輝の温度に、緊張してしまう。
「……祥と話し合って、一年間離れたけど祥を好きになったこと後悔もしなかった。 それに少しも冷めなかったよ。 会えない分祥の事が好きで堪らなかった」
「……うん」
「一秒でも早く祥の隣に帰りたかった。 こうやって触れたかったし、キスも飽きる程したかった」
「俺も……。 直輝と会えなくて寂しかった。 話す事も出来なかった三年間よりもずっと、直輝と話し合って離れた一年の方が長く感じて……早く会いたいって思ってばっかだった」
「エッチな夢見ちゃうし?」
「ッそれは言うな!」
「ふはっ、もう可愛いなぁ」
「煩い……ッ」
恥ずかしいこと言ってくる直輝の肩を小さく叩いた。
それでもクスクス笑って可笑しそうに楽しそうな笑顔を浮かべながら頬を撫でてくるから、怒りたくても怒れない。
好きになったら本当に何でも許してしまう。
俺も直輝の笑顔が大好きだ。
含み笑いとか外行きの作り笑いじゃなくて、少し幼く見える楽しそうな笑顔をこんなに近くで見れるのが幸せ。
笑う直輝と視線が絡みあって、体温が熱くなる。
けれど、不意に見えた瞳の奥の真剣な眼差しに空気が少し変わった。
「なあ……祥」
「うん?」
「ニューヨークに行く前にした約束の返事、聞かせて欲しい」
「ッ!」
意思の強い声に、茶色の瞳が真っ直ぐ見つめてくる。
繋がれた手のひらから感じる体温と、触れた直輝の肌から緊張が伝わるんじゃないかってぐらいドキドキと煩い心臓の音は俺だけのものじゃなくて、直輝からも伝わる鼓動だった。
「……あのね」
「うん」
微かに開いた唇が震えていた。
学生の時のような若さはもう無い。
愛があればなんとでもなるだなんて無謀で真っ直ぐで痛いくらい没頭出来る程、盲目にはなれない。
どんな言葉にも、どんな行動にも、責任が伴う。気持ちよりも大人としての選択をしなきゃならないんだ。
でもそれだけの理由でこんなに緊張して怖がっているんじゃなくて、本当に俺が出した答えが二人にとって良いのかなんて怖気付くのは……泣きたくなるほど程直輝が好きで、誰よりも幸せになって欲しいから。
今から俺がする返事がどれだけ重いかを十分に理解し合っているから。
「俺ここの遊園地に昔母さん達と来たんだ」
「そうなんだ。 初めて聞いた」
「うん……俺も誰かに話すの初めて。 話しちゃうと悲しくなるからあんまり思い出すの嫌だったんだけどね、でも直輝には聞いて欲しい」
「そっか。 ありがとな話そうとしてくれて」
「ううん、俺こそつまんない話だけど」
少し泣きそうだ。
でも隣に居る直輝が大丈夫って言うように頭を撫でてくれるから涙よりも笑みが零れる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
386 / 507