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二人の夏休み …7
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花火大会まであと2時間くらいになって、急に人通りが多くなった。
はぐれないように雅治さんのそばを歩く。
こうやって堂々と肩を寄せ合って歩けるなんて、人混みも悪くないな、なんて思っちゃったりして。
雅治さんのこと狙ってた女二人は、いつの間にかいなくなってた。
雅治さんがずっと怖い顔をしていたせいか、…俺がチラチラ見ていたせいか…
「食べ物買ってそろそろ場所取りしよう」という雅治さんの提案で、イカ焼き、たこ焼き、焼き鳥を購入。
あと、ビールとお茶も。
雅治さんは、自分は運転でお酒飲めないのに、俺には飲ませてくれる。
遠慮するのに、飲まされる…
お酒の入った俺は、見てて楽しいんだって。
ま、焼き鳥にはビール!と思ってたから…嬉しいけど…
花火の見えそうな場所を見て回って、土手の一番上の、後ろがガードレールになっているところに腰を下ろした。
開始まで1時間以上もあるのに、土手は観客でほとんど埋まっている。
とりあえず、お茶とビールで乾杯した。
まずはイカ焼き!と手を伸ばしたら、雅治さんに「そんなに好きなの?」と笑われた。
「甘辛のタレが好きなんです」って言ったら、じゃ俺もそれから食べよう、と手に取った。
イカ焼き持ってても、カッコいいなぁとか考えてたら、ふと、和製ジョニデが頭に浮かんで、可笑しくなった。
和製ジョニデが、イカ焼き…
ふふっ
「何笑ってるの?」
雅治さんが首を傾げた。
「いいえっ。…楽しいなぁと思って」
「…そうだな」
雅治さんが、車を降りた時以来の優しい笑顔をくれた。
そうしてるうちにどんどん人が集まって来る。
「あのー、隣、良いですか?」
突然、俺の横から、女の人が話しかけてきた。
振り向くと…浴衣の女性二人がそこにいた。
あー…これは、ヤな感じ…
でも、ダメとは言えないよね。
「どうぞ」
なるべく、素っ気なく返事して、目が合わないようにした。
「あのー、そちらはお二人ですか?」
なのに、わざわざ目線に入るようにして、俺の顔を覗き込んだ。
「…そうですけど?」
「わぁ!私達も二人なんですよ!良かったら一緒に花火…
「ねぇ陸、俺にもたこ焼きちょうだい」
突然、雅治さんが俺に話しかけてきた。
「えっ?あ、はい!」
雅治さんに向き直って、自分の手の中のたこ焼きのパックを渡そうとしたら…
雅治さんが、あーんと口を開けた。
えっ⁈
この状況で「あーん」をしろと⁈
…まぁでも、女二人に構うより、こっちが大事。
俺は爪楊枝でたこ焼きを持ち上げて、雅治さんの口もとに運んだ。
雅治さんが、パクリとそれを口に入れる。
「っ!!」
口にした時に合った目が、とても色気のあるものだった。
しかも、唇が…俺の指に触れた。
こんなところで、なんて目で見るんですかっ⁈
それから、とろけるような目で「美味い」と、俺に微笑んだ。
ドキリと心臓が跳ねる。
「今度は俺が食べさせてあげる」
と、雅治さんが俺の手から爪楊枝を取り上げてたこ焼きに刺したところで、また隣の女が声をかけてきた。
「あの…お二人は…」
そこで初めて、雅治さんがその女の方を見た。
「何?」
その目は、俺を見る目とは全く違う、苛立ちを顕にしたものだった。
「あ……。い、いえっ、なんでもないです!ごめんなさい!」
一瞬固まった彼女たちは、そそくさとその場を離れて行った。
雅治さんの眼力、恐るべし…
俺もあんな目で見られたら、逃げちゃうよ…
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