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素直になれない …1
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次の日の夕方、ジム終わりの雅治さんと待ち合わせて、横浜でご飯を食べた。
雅治さんは、前日のことを謝ってくれたけど…
金曜の夜から絶えることなくモヤモヤしていた俺は、なかなか素直になることができなくて、雅治さんから心配された。
ちなみに金曜日は、松井さんを送ってる途中で急に「相談がある」とか言われて、無視するわけにもいかず、相談を受けたらしい。
ちなみに…駅前のスタバに閉店まで居座ったらしい。
居酒屋とかじゃなくて、良かった…
昨日は、社員寮から出たいって言う松井さん始め、新人達の部屋探しに付き合わされて、彼らが「小栗さんのマンションも見てみたい」と言って引かなかったそうだ。
そして、なぜか宴会が始まった、と。
「元気ないけど…体調が悪いのか?」
「いえ…そうじゃなくて…」
「昨日のことは、本当にごめんな?」
「それは…もう、いいんです」
分かってるけど、長いこと「なんでなんで」と渦巻いていた俺の中の黒いものは、なかなか晴れてくれない。
一昨日も昨日も、雅治さんは悪くない。
雅治さんが優しすぎて…そこに後輩に付け込まれただけなんだよ。
はぁ…
本当は、雅治さんと外で食事出来て嬉しいのに。
また色んなこと考えちゃって、素直に喜べない。
食事の後は、雅治さんの車に向かった。
クリスマスムードで華やいでいる街並みを見ながら、ぼんやりしていたら「どこかイルミネーションでも見に行きたいね」って雅治さんが言ってくれて、少し気分が上がった。
そうだ。
今年は、恋人のいるクリスマス。
仕事だけど…
一人じゃないってだけで、気持ちに余裕が出来るのは不思議だよね。
クリスマスプレゼント、どうしようかな。
それより、男同士のクリスマスって…何するの?
ま、考えてみたら、普通のカップルでも、食事してプレゼント交換するくらいだよね?
そんなことをウキウキと考えながら車の所まで来た。
「これからどうする?」とか話しながら助手席のドアを開ける。
「あ…」
そこで、俺はそれまで浮上していた気分を、一気に手放すことになった。
そこには…50センチぐらいのクマのぬいぐるみが座っていたからだ。
なに、これ。
雅治さんの車にそんなものがあるという、明らかな違和感に、気分が悪くなる。
なんで…
「あ、ごめん。松井が置いてったやつだ」
雅治さんが、ポイッとぬいぐるみを後部座席に放った。
松井…
「…どうした?…乗らないの?」
動けない俺を見て、雅治さんが不思議そうに俺を見た。
「あっ…すみません」
慌てて乗り込む。
シートベルトをつけながら、後ろのぬいぐるみを見やる。
「あの…このぬいぐるみ、どうしたんですか?」
「あぁ、松井が何かで貰ったらしくて…先週それを持ってる時に俺が車で家まで送ったんだけど、持って帰らずに置いてったんだよ」
「え?何でですか?」
「うちに持って帰ったら邪魔だとさ。持って帰れって言ってるんだけど…持って帰らないし。俺が勝手に処分していいか困って。…結局、置きっ放し」
「そうなんですか…」
ふと、ある事を思い出した。
河野さんの…口紅のことを。
わざと、置いてるのかも…
なんてことが頭を過ぎった。
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