アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
【後日談】一夜の夢、一生の誓い …6
-
「付き合って何年目だったかな?…ある時、その想いが爆発してさ、私、彼に当たっちゃったんだよね。彼、悪くないのにね。…そしたらさ、彼が『俺も辛いんだ』って、逆ギレしてさ…フフッ!私以上にすごい剣幕だった」
その時のことを思い出すかのように、マキさんは微笑んだ。
「いつも冷静な彼が感情を露わにしてグチグチ言うもんだからさ…逆に私の方が冷静になっちゃって。フフッ。…まぁ、これは私の場合の話になるけど。他人に話せない分、こういう事は溜め込まずにちゃんとパートナーと共有するのが大事だなーと、その時思ったのよね」
そこで一息つくように、マキさんも湯呑みを口にした。
「共有…」
「あ。なんか、うまいこと言えなくて…ゴメンね?話聞くとか言っときながら、特に解決策を提示できなくて…」
マキさんが申し訳なさそうに肩をすくめた。
「あ、いえ!聞いてもらえただけで、すごく救われると言うか…。共感してもらえて、すごく嬉しいです。あと、その、俺もちゃんと彼に思ったこと話せるようになりたいと。…そう、思ったら、なんか少し楽になりました」
うん。
そうだ。
俺一人でぐじぐじ悩んでるつもりでいたけど、もしかしたら雅治さんも悩んでるかもしれない。
自惚れかもしれないけど。
でも、その可能性を考えただけで、ちょっと心がくすぐったくなったと言うか…軽くなった気がする。
あぁ。やっぱり相談してよかった、と思った。
マキさんが湯呑みを置いて、俺を見つめた。
「佐藤くん、君って素直で可愛いのね」
「えっ?」
「いや、何か、お友達になりたいわ」
マキさんが、ウフフと笑った。
え?友達?
友達!!
「えっと、あ、はい!ぜひ!」
マキさんの言葉に、思わず返事をした俺。
だって、こういうこと話せる友達欲しいじゃん!
友達はおこがましくても、知り合いくらいにはなりたい。
そんな真剣な俺とは裏腹に、マキさんは驚いた顔をした後、笑い出した。
「ふふっ、ホント、佐藤くんっていいわ!」
あれ?
友達になりたいって…もしかして社交辞令と言うか、冗談だった?
そう…かも!
だって、初対面で素性も知らない相手といきなり友達になるとか、変だよね?
俺の、酔っ払い〜…
「あっ、あの、調子に乗ってごめんなさい」
「ん?何を謝るの?うん、いいじゃない。友達。ぜひ仲良くしましょ」
そう言って、握手を求めてくれたマキさんの手を、俺は感動しながら恭しく握らせてもらった。
やった。友達できた…
あ。見た目は女だけど、握手すると、やっぱり女の子とは違う、かも…
そんなことを考えながら、ふとある疑問が頭に浮かんできた。
「あ、あの…ちょっと気になったんですけど…」
「ん?…うん。何でも聞いて?」
「あの、マキさんって、言われなかったら女性にしか見えないんですけど…その格好だったら、デートとか普通に出来るんじゃないですか?」
そうだ。
そうなのだ。
この格好なら、誰にも疑われずに、彼とデートできるハズ。
その指摘を受けて、マキさんは照れたように俯いた。
「そうね…私がこの格好をするようになったのは2、3年前からで…経緯は色々とあったのだけれど。…確かに、この格好に自信が持てるようになってからは、たまに、外を恋人らしく歩けるようになった…かな?」
そう言って、照れる姿はまさに恋する乙女。
「手…繋いだり?」
「ふふっ。そうね。…と言っても、昼間は無理よ?やっぱり明るいところではダメ。どこかお店に入るときも、ここみたいに暗いお店じゃないと入れないなぁ。暗いと、色々誤魔化せるしねっ」
「そう…なんですね」
「でも、夜だけでも…人前で寄り添って歩けるのは、すごく幸せなの」
そう言ったマキさんは、本当に幸せそうに見えた。
あぁ…
羨ましい。
それが、俺の素直な感想。
俺も、そんなデート、したい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
511 / 559