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蒼の章5
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嫌な事件のせいだ。
俺はいつの間にか近所ですれ違う人々の様子を気にするようになっていた。もしかしたら、犯人とすれ違っているかもしれないのだ。とはいえ、流石に態度には出さない様に気をつけるようにはしている。
ああいった事件を起こす奴をテレビで散々見てきたが、学生時代は大抵真面目で成績も悪くなく、大人しくて目立たない奴が多い。
えっ、あの人が?
インタビューではお決まりのリアクションだが、例えばうちのお隣さんが犯人だったら俺だってそういう感じになるかもしれない。
繁華街へ行けば、いかにも堅気ではない出で立ちで、周りの人間に威圧のオーラを垂れ流し、皆が直ぐに察知して視線を外すようなヤバい奴もいるが、そういうアウトロー的な人間は、金や女、脅しや暴力に悦を感じる。
こういうタイプはある意味分かりやすい。
だが、動物を殺すような人間は、明らかに病的でも無ければ、普通の人間と区別がつかない。
……実は近所に1人気になる奴がいた。
三ヶ月前に越して来た家族の大学生の息子だ。
東京から来たとの話だが、噂じゃその息子に問題があったんじゃないかと囁かれている。
父親は大手企業のやり手だったらしいのに、そこを辞めてこんな中途半端な田舎町に越してくるなんてゴシップに飢えているおばちゃん達の格好の餌食だった。
俺がその息子に引っかかりを感じるのは、その息子と河川敷でたまたま出くわした事があるからだった。
その日、仕事が中々決まらない事で母親からネチネチ嫌味を言われた俺は、いたたまれなくなり夕暮れの中逃げるように散歩に出掛けた。
河原を力無く歩いていると、向こうから男がやって来る。
地元の田舎の若者とは少し違うブランドものらしい垢抜けた服にモデルさながらのスタイル、色素が薄いのか髪も瞳も陽に透けて茶色く、全体的に清潔感がある青年。けれどファッションセンスに違和感があり、どこかちぐはぐしている。まるで男の着せ替え人形みたいだと思い当たると自分の中で腑に落ちた。それでも、きっと女がほっとかないだろうと思った。
ああ、こいつが例の東京さんの息子か。
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