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アレにしおりをはさみました!
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アレ
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自分のクラスを後にした俺は、園原のもとへ行く。
どうやら園原のクラスもとっくに解散しているようで、教室内には数人の生徒が残っているだけだった。
「園原っ」
声をかけて彼の元へ走れば、こっちに気づいた園原が顔を上げる。
「奏太」
「園原、帰ろう」
「ん。待って」
帰る準備をする園原の隣に寄り添うように立つ。
園原が何も言わないのをいい事にじっと見つめていれば、突然後ろから覚えのある呼び方が聞こえた。
「あれー、王子様また来たんだぁ」
彼の呼び方にも、もうすっかり慣れてしまった俺は何事もなく振り向く。
「テストお疲れ、綾瀬」
「むぅ...。つまんない反応」
綾瀬はいつも俺のことを「王子様」って呼ぶけど、それが嫌味でも何でもない事も、本当は彼が俺の名前を知っているってことも、今はちゃんと知ってるから特に気になることもない。
だけど綾瀬は面白い反応を期待しているみたいで、残念そうに唇を尖らす。
そんな綾瀬の手が、ふ、と俺の胸ポケットへと伸びた。
「さすがにアレを何日も入れっぱなしにはしないか」
綾瀬の言う「アレ」の正体を知っている俺は、ギクッと肩を揺らす。
この前、お詫びとして貰った媚薬の入った小瓶。
勿論あんなものをポケットにしまってなんておけないし、ちゃんと部屋に隠してある。
捨てなくちゃと思っていても、中々捨てられないのが現状だった。
だって、綾瀬が「どんな男でも気持ち良くなっちゃう薬」なんて言うから「園原に使ってほしい」なんて言うから...。
どんどん妄想が膨らんで行くのを、俺は首を振って誤魔化す。
すると、そんな俺の横からキョトンとした園原の声が聞こえた。
「アレ..?アレってなんだ」
いつの間にか帰りの支度を終えていた園原が興味ありげに此方を見つめる。
しっかり会話を聞かれていたことに驚いた俺は、あからさまに目を泳がせながら園原の肩を掴んだ。
「う、ううん。ナンデモナイヨ。帰ろ」
怪訝そうな顔をする園原に気づかないふりをしながら俺は園原と二人で教室を出る。
後ろで綾瀬が愉快そうにニヤニヤしてるのを何となく雰囲気で感じながら、誤魔化すように廊下を進んだ。
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