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俺にどうすれとにしおりをはさみました!
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俺にどうすれと
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気まずいばかりの、夕食も終わり…。
沖とフジは疲れた言い出し、早々に松野くんが用意した来客用である別々の部屋へと向かって仕舞った。
…で、俺はと云いますと。
「波嶋、ごめんね手伝わせちゃって」
リビングに残り、松野くんと2人で食事の後片付けの真最中。流石に松野くんだけに後片付けなんてさせらんねーよ、ってのはまぁ一理あるんだけど、それはほんの建前な訳で。
(あの2人のあと付いていくのもこえーし…)
ぽつりと呟いた心の声は9割型本音。
「いやいや!気にしないで!急にお邪魔したのはこっちだし、夕飯御馳走になっちまったし、!!うん」
まぁ正確には松野くんの独断だけどさ(笑)。
兎にも角にも、あんなデリバリーを全て御馳走になっちゃった、ただのバイトもしてない至ってふつーの、男子高校生ですし?
御飯御馳走になったからには、手伝うのは礼儀だろ?
食器をスポンジで擦り、お湯で流す。
流し終えてピカピカになった高そうな食器を、松野くんにパス。松野くんが白くてこれまた高そうなタオル布巾で仕上げに水分を拭き取る。
最後の食器を松野くんに渡し終えると、これで完了!
殆どデリバリーだから、食器っていってもそう多くないんだけどね。
「…よし、終わった。ありがとね、波嶋。助かったよ」
松野くんも拭き終え、食器棚へと戻し終える。
にこりと笑顔でお礼の言葉を俺に向けると、男の俺でも魅入ってしまう程、顔立ちが整っている事に今更ながら、思った。
「あ、…そんな大したことしてないから、礼言われても…」
少々とぎまぎしてしまい、それを隠すように視線を外す。
…同性でもこんなに綺麗な人間いるんだな、なんて思うし、つーか、ほんと、こんな綺麗な人がフジのこと好きなだなんて、なんて余計な事まで考える。
自分の色恋に触れたことも無い俺が、他のヤツの色恋沙汰に首を突っ込むことなんざ、あった試しなんてない。
耳に残るのは、あの時の、松野くんの言葉ばかり。
(…あの言葉のせいか、松野くんとも2人っきりになりたくねーとか、)
ンなこと考えるなんて、失礼だよな。
でも、腹の奥底ではなんでか、松野くんに焼きもち妬いてる俺が、いる。
バカみたいだけど、フジ取られそうになって、今更焦ってる俺。
それから、今迄感じた事もましてや思ったこともない独占欲ってヤツが奥底から、ジワジワと溢れてくるんだ。
「…だけど丁度よかった、」
そんな俺のココロをまるで読み当てるみたいに、あたかも知ってたかのように。
ポツリと言葉を俺に零した。
ギクリ、と俺は反応する。
なんでだかその先の言葉を聞きたくないと身体が、拒絶してるかのように。
けれど、松野くんはそんなことは知ってか知らずか、気にする素振りなど全くなく、言葉を続ける。
俺は聞きたくなくて、その先の言葉を容易に想像出来てしまう事がとてつもなく恐ろしくなった。
だけど、逃げ出すことも耳を塞ぐことも出来やしない。
…なんでかって、??
身体は拒絶してても、頭が働かねぇんだよ!!!
馬鹿みたいだけど、ホントのハナシ。
ンなこと言ってる間に、松野くんは嬉しそうな声色で言葉を発していた。
「俺ね、今夜フジくんに告白しようと思うんだ」
俺はこの時、松野くんがどんな顔をしていたのか、どんな表情でこの言葉を口にしたのか。
そんなモンは確認しようがなかった。
何故かって云いますと、クソビビリな俺の身体はその時、松野くんに視線を向けることすらできなかったから、だ。
けどさ、顔なんて見なくてもすげーわかっちまったことが一つだけ、
たった一つだけあるんだよね。
それはさ、俺の鼓膜を震わせるほどにさ、
松野くんの声がとっても、とっても、
フジが好きなんだってこと。
思うのは、何で普段はあんなに鈍くて鈍感で色恋なんざ、全くわかんねー俺が。
こんな色恋沙汰に、一番気づきたくねーことに、
気づいちまったんだよ、ってハナシなわけで。
こんな、ハナシ聴きたくねーなんて、思っちまうほど、俺がさ、
お前のこと本気で好きなんだ、なんて。
今更、本当に、いまさら、さ。
こんなバッドタイミングで気付くなんて。
間抜けすぎかよ、って笑えるんだけど。
だけどさ、俺そんな笑なんて到底出せないほど、
動揺して、ナニすればいいのか、どうしたらいいのか、
頭働かねーのが、すげー問題なンだけど。
沈黙が流れたのか、時が止まったのか。
俺の視線は床の一点を見つめるばかり。
音を発さない、唇だけが微かに彷徨う。
何を言いたい?何が言いたい?
決まってんだろ、バカ。
唇を噛み締めた、ぐっと鳴るのは嚙み締める音。
ドクドクと高鳴る心臓と痛いくらいの眩暈と。
渇いた口を開ける。
「……俺は、」
床を一心に見詰め、振り絞った声の音。
じわりと滲む汗を握り、詰まりそうな喉を鳴らす。
「いいよね、?なみしま」
切り裂くように空気に亀裂が走る。
気付いたら、俺は見上げていた。
見上げた先には綺麗に優しく微笑む、松野くんのかお。
随分と長い間、彼のその微笑みを見つめていた気がする。
思考はまたも停滞。
混乱が渦を巻き、パニックなんてもんじゃ、足りないくらい。
ぐるぐる回っる頭ン中。
どうしたらいい?誰かが俺に尋ねる。
そんなの、俺が聞きてぇよ。
完全に四方八方塞がりな、俺。
つーか、なんで俺に了承とるンだよ。
ふざけんな。
何で俺に聞くんだよ。
なんて、すげーキレてる自分もいる。
それよりも、何よりも。
この状況はさ、望んだものでもないワケでして。
まるで、俺が答えを早く出さなかったのが悪いのか。
まだいいかと先延ばしにしようとしたからなのか。
でもよ。
俺ばっかりンなこと不公平だろ。
手伝ってとかなんとか。
俺は恋のキューピッドなんて、モンじゃねーんだよ、おい。
他人の色恋沙汰に首突っ込むつもりなんて、ねーよ。
ましてや、俺が好きになってしまった?相手の恋のキューピッドなんて、笑えねーよ、なぁ。
何が言いたいかって言いますと。
俺にどうすれと言うのですが、神サマ。
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