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80.助っ人たち
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* * *
蛇光さんと言い合った後、逃げるようにして部屋へと帰った俺は、きちんとリカちゃんと話すこともなくベッドへと潜り込んだ。
本当は色々と聞きたいことがあった。俺が鷹野を送って行った間に、蛇光さんと何を話したのか。どこで手当てをしたのかとか。
あの女が言っていたことを、リカちゃんはどう思うのかとか。それは告げ口に他ならないけれど、リカちゃんは俺を責めたりはしないだろう。
でも、できなかった。
何かを言ってしまえば、言っちゃダメなことまで口に出してしまいそうな気がした。
言っちゃダメなこと。
それが何かは多すぎて、挙げればキリがない。
「はあ……最悪」
病は気からって言うけれど、気持ちが落ち込んでいると病気になるんだろうか。頭が痛いし身体もだるい。
朝起きた時にリカちゃんはもういなくて、俺を心配するメッセージは来ていたけれど、返事はしていない。
だって、仕事に行ってるやつを相手に『風邪ひいたっぽくて、しんどい』なんて言えるわけがない。
それにリカちゃんなら多少辛くても我慢する。辛いなんて周りには悟られず、いつも通りに過ごせるだろう。
何でもできるリカちゃんに、何もできない俺が辛いなんて言えるわけがない。だから俺はリカちゃんからのメッセージに既読だけを付けて、返事はやめておいた。
気分が落ちすぎて大好きなゲームをするのも面倒で、ソファに寝転んで天井を眺める。けれど、この上にあの女が住んでいるのだと思うと、姿が見えもしないのにさらに気分が悪くなってきた。
「ダメだ、外に出よう」
家にいると嫌なことを考えてしまいそうで、支度を済ませる。財布とスマホだけを持って靴を履けば、玄関の向こうから声がした。
「ああもうっ!豊のせいで計画が台無しよ!当初の予定なら、午前中には全部終わってたはずなのに」
「おい、俺の所為にするな。そもそもお前がきちんとサイズを測らなかったのが原因だろうが」
「うるっさいわね!ちゃーんと手で測ったもの!まさか誤差が出るとは思わないでしょ」
「……はあ。こんなバカの為に折角の休みを無駄にするなんて、俺はどうかしてた」
「なんですって?!あんたの代休に合わせて、わざわざ有給をとったあたしによく言えるわ!」
「お前の部屋の片付けを手伝ってやってるんだから、お前が俺に合わせて当然だろうが。部屋じゃなく先に頭の中を整理してこい、このオカマ野郎」
「あたしはオカマじゃなくてオネェなの!!何度も言わせないで!あと、なんであたしの持ってる荷物の方が重いのよ!!」
ポンポンと続く会話のラリーはさすがとしか言いようがなくて。その内容から、2人が部屋の片づけをしているのがわかる。
そして、今は買い出しに行ってきた帰りだということも。
俺の予想通り、廊下の先には大きな袋を提げて歩いてくる2人がいた。2人に会うのは久しぶりのような気がする。
「あら、ウサギちゃんじゃない」
俺に気づいた桃ちゃんが手を振ってくれる。
「久しぶりだな。元気か?」
俺に気づいた美馬さんが少しだけ笑ってくれる。
「うん元気。桃ちゃんと美馬さんも元気そうで良かった」
俺も、笑って返した。
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