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「リカちゃん先生には近づいてはいけない……当たってたんだ…」
でも、そんなの無理だ。
あの目に見つめられたら、あの声で呼ばれたら。
きっとまた俺は吸い寄せられるように近づいてしまう。
誘われるままに触れて求められるままに差し出して、何でもするだろう。
「好きって消えるのかな」
例えばこの先、卒業して住むところも変わって…そのうち俺はリカちゃん以上に誰かを思う日が来るのだろうか。
こんなにも胸を痛め、声を枯らすほどに誰かを求める日が来るのだろうか。
「リカちゃん……リカちゃん…」
思い出すのは幸せな思い出ばかり。
「嫌だ。俺以外に触れんな…俺だけを見てろよ…」
『…ごめん』
夢の中のリカちゃんがまた謝った。
*
朝、目を覚ましたら頭が痛かった。瞼が少し腫ぼったいのは泣いてしまったからだと思う。
毎日用意されていた朝食。それが今朝は何も無かった。
冷蔵庫にはたくさんの食材があるのに、このままじゃ全部ダメになってしまう。
大好物のメロンパンが今日は全く味がしない。
いつも黄金比率で淹れてくれるコーヒーがやたら苦くて捨ててしまった。
たった1人。
たった1人がいないだけで全てが違う。
*
「………青い」
「そりゃ空だからな」
屋上に寝転がり、ただどこまでも広がる空を眺める。
隣には黙ってついてきた歩がいる。
学校に来たはいいものの、HRが怖くなってしまった俺は逃げるように屋上に来た。
会いたくなかったんだ。
先生の顔をしたリカちゃんに。
先生の顔で先生の声で名前を呼ばれたら、また泣いてしまう。
本当に『先生』と『生徒』に戻ってしまう気がして。
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