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「あ……、おはようございます」
リカ達と別れた後、1人で部屋に戻る途中でばったりと歩ちゃんに会ってしまった。
まだ寝ぼけているのか開き切っていない目に、跳ねた後ろ髪。どんなにマセていても幼さの残る歩ちゃん。
大人びたことを言っていても、この子はまだ高校生だ。
「おはよう。よく寝てたわねぇ」
「あー…なんか兄貴に叩き起こされて。しかも起こした本人は帰ってこねぇし」
ぶつくさ言いながら手に持った水をあおる。
反対の手にはコーラの缶が握られていた。
あたしの視線に気づいた歩ちゃんが手に持ったコーラを持ち上げる。
「あ、これ?これは拓海の。アイツ朝っぱらからコーラとか元気過ぎますよね」
「たっくんらしくて可愛いじゃない」
そう言えば…。
自分が最後にコーラを飲んだのはいつだろうか。
忙しい仕事に追われながら日々を過ごす毎日。
空いた腹に落ちるブラックコーヒーにも慣れ、飲むといえばコーヒーか水かアルコールばかり。
根本的にこの子たちと自分は違う。
年の差とかそんな簡単なものじゃなく、生きている世界が違う。
あたしにはリカのように歩み寄ることも支えることも出来ない。
付かず離れずの位置で傍観するしかないのだ。
それが、あたしの選ぶ生き方なのだから。
「桃さん」
黙り込むあたしに、歩ちゃんが声をかけた。
「なぁに?」
不自然なほど明るい返事。
それを目敏いこの子が気づかないわけない。
「なんかありました?兄貴……それとも慧と」
無表情だけど奥を見透かす目をしている。
「別に何も無いわよ。リカともウサギちゃんとも仲良しだもの!もちろん、歩ちゃんともね」
さりげなく、けれどハッキリと距離をとることを示す。
誰かの特別にはならない。
それはあの日学んだ方法。
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