アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
323
-
「で、お前はどうすんの?」
生意気そうなウサギを振りながら聞く。
「…………いらない」
そう答えた俺に「わかった」とあっさり引き下がったリカちゃんは、そそくさとレジに向かう。
何か言われると思ったのに意外だ。
その背中が完全に見えなくなり、俺はそっと棚に近づいた。
なぜかライオンのくせにウインクしてるマスコットの付いたシャーペン。
リカちゃんとは似ても似つかない。
「……似てねぇよな。うん、似てない似てない」
だから俺がこれを買ったとしても、リカちゃんとは無関係だ。
数ある中で1番偉そうな顔したヤツを選ぶ。
左右を確認して手に取った。
「よし」
「決まった?」
「!!!!」
ひょいっと後ろから手の中のモノを奪い取られ、俺は驚いて背後を振り返る。
そこには、それはもう楽しそうに笑う本物のライオンがいた。
「なんでいる?!」
「お前の行動なんてお見通しなんだよ。うちのウサギさんは素直じゃなくて有名だからな」
「騙したな!」
「騙してねぇよ。作戦だ作戦」
いけしゃあしゃあと言いのけたリカちゃんは、今度こそレジに向かって行く。
戻ってきたその手にはビニール袋があった。
「はい。俺のことが好きすぎて隠れて買おうとしたウサギさんの分」
「……その性格の悪さに慣れすぎて感覚麻痺してきた」
「ほぅ。どんどん俺に染まっていってるって事だな」
「どんだけ前向きなんだよ……」
ご機嫌なリカちゃんは袋ごと俺に渡してくる。
渡しながら、さり気なく俺の指に自分の指を絡める。
グッと引っ張られ、つんのめるようにリカちゃんの胸の中へ引き寄せられた。
「俺だと思って可愛がってあげてね」
俺を支えるフリをして耳元で囁くのは、反則だ。
そんな事されたら、もう一生忘れられない思い出になっちゃうだろ。
…これだけは壊れても大事に持ち続けるに違いないな、なんて思いながら袋を握りしめた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
323 / 1234