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「あの慧が怒って笑ってするなんて…」
まるで俺が感情がないみたいな言い方。
けれどそれは仕方ないのかもしれない。
俺が恒兄ちゃんの前で泣いたのは星兄ちゃんが死んだ時が最後だから。
今じゃ笑うことも怒ることも無くなったんだからな。
「こいつ俺の前じゃ基本怒ってるか拗ねてるかなんだけど」
「全部てめぇの所為だろうが!」
「なんでだろうなぁ…バランス良く食べさせてるはずなのに」
上から下まで俺を見て、わざとらしくため息をつく。
それは怒りっぽいことを指してるだけじゃない。
「てめぇ何が言いたい?」
「バランスよく食べよく寝てるのに…育たない上にイライラがなくならないのが不思議」
「俺はチビじゃねぇ!!!」
最近伸び悩んでる身長のことも含まれてた。
どこで誰がいようと変わらない、自分を貫くそのスタイルに振り回されてばっかりだ。
「慧が変わったのは『リカちゃん』のおかげか…」
恒兄ちゃんらしくない緩い笑み。
いつもの固さが消え、少しだけ星兄ちゃんに似てると思った。
「獅子原さん」
恒兄ちゃんが呼べばリカちゃんが視線だけを向ける。
「お願いがあるのですが……『リカちゃん』に全て任せる、とお伝えください」
「それはどうも」
「くれぐれも『リカちゃん』にですから。
獅子原先生じゃなく、『リカちゃん』にですからね」
恒兄ちゃんはそう言うと、リカちゃんにお辞儀をしてから俺の頭を撫で、早足で行ってしまった。
リカちゃんの登場から今まで…何一つわからないのは俺だけ。 それを教えてくれるのはただ1人だけだ。
「慧君も知りたい?」
「お前…マジでウザいんだけど。いいから早く教えろ」
「それなら何て言うんだっけ?」
俺の口を指で突いて続きを促す。
自分が完全に有利だからって余裕すぎるその行動。
「早くしないと俺の気が変わるかもよ?
俺が教えないと慧君は何もわかんないからなぁ…」
ニヤニヤ。これでもかってぐらい凶悪で腹立つ顔して笑うリカちゃん。
「教えて、く…ださい」
「人に頼む時ははっきりとした言葉でちゃんと相手の目を見て言えよ」
クソッ…この性悪ドS野郎がっ!!
俺に残された手段は1つ。
「教えてください。……これで満足か?!」
「なんでお願いがケンカ口調なんだよ」
「言ったんだから約束は守れよ!」
苦笑したリカちゃんが「ついておいで」と廊下を進む。
なかなか教えてくれないことを不服に思いながらもついて行けば、エレベーターに乗りどんどん上の階へ。
案内されたのはホテルの1室。
「なんで?」
「気分」
どんな気分だよ。
そう返す隙もなく部屋の扉は閉ざされ、俺たちは数日ぶりにやっと2人きりになれた。
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