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あの日、拓海君を無理矢理帰した俺はリカと桃との約束もキャンセルして1人で色々考えた。考えれば考えるほど、どうしようもなく自分が嫌になる。
桃なら何事もなかったかのように笑って謝れるんだろうな…リカなら、そもそもこんな風に悩まないんだろうな。
2人のことを特別だと思っていながら、そんな2人になりたいとも思う。どんなに頑張ってもなれやしないと気付いてまた落ちる。
負の連鎖に飲み込まれていく自分を感じた。
「お前らみたいな特別で目立つやつの隣にいると嫌でもわかる」
まるで2人が悪いかのように言った俺に、今度こそ見放されるんだろうなと覚悟する。
だってリカも桃も俺なんかいなくても平気だろうから。
じゃあもう離れていけばいいだろってリカなら言いかねない。
あの冷たい目で俺を見て「どうでもいい」と部屋を出て行くリカの姿と、戸惑いながら考え込む桃が頭に浮かぶ。
こんなはずじゃなかったのに…こんなのは八つ当たりだ。
リカも桃も何も悪くない。心配してくれてるのも、励まそうとしてくれてるのもわかってるのに。
だから俺は駄目なんだと拳を握った。
「ふふっ」
聞こえてくるのは笑い声。俺はこの声をよく知ってる。
いつも俺の隣にあって、いつも笑っていて人を傷つけない優しいやつの声だ。
「嫌がられるどころか認めてくれてんじゃない。安心した?」
それは俺にじゃなく桃からリカに対しての言葉。
リカが誰かに嫌がられてないかと不安になるなんて考えられない。
「豊を怒らせる度に今度こそ捨てられたらどうしようって泣きついてくるくせに」
リカが桃に返した言葉も俺を驚かせる。
俺が桃を見捨てるんじゃなく、桃が俺を見捨てるんだろう?
嫌がられるのも見捨てられるのも全て俺の方なのに…。
どうして2人は安心したような顔して俺を見て、そして笑うんだろうか。
「さっきから何を言ってるんだ」
問いかけた俺にリカは少し溜めて答えた。
「俺さ、いまだに電車の乗り換え出来ないんだよ。気付いたら目的地とは全然違う方向に行ってるんだ」
「あたしだって相変わらずお化け苦手よ。気付かずにホラー番組観ちゃってトイレ行けなくなってね…夜中どうしても我慢できなくて歩ちゃんに電話したら怒られちゃった」
「いや、だから何の話をしてるんだって聞いてる」
リカが極度の方向音痴なことも、桃がホラー系が苦手なのも昔から知ってる。なぜ今それを言い出したのかがわからず、俺は2人を見る。
「いや、なんか豊は俺たちのことすげぇ褒めてくれるけど大したことないんだって」
「そうよ。リカの特技なんて下ネタ系ばっかりだもの。そんなの全く自慢にならないわ」
「人を変態扱いすんな。……まあ簡単に言うとだな、お前が思ってるほど俺たちは万能でもないし欠点も多い。それでもお前が俺たちのことを特別だって言うんなら教えてやる」
教えてやるなんて上から言うくせにリカの表情はとても優しい。
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