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覚悟(リンside)
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コンコン。
コンコンコン。
「ん……」
薄眼を開けてみたが、夜明けまでまだ時間があるのか、部屋の中は未だ夜の闇に閉ざされたままだ。
コンコンコン。
……うるさい。
相手はわかっていた。
こんな非常識な時間に使いをよこす相手など、一人しか知らない。
そして、いくら眠さのあまり無視を決め込んだところで、飼い主にベッタリな遣いが折れないこともまた、度重なる経験から熟知してもいた。
仕方なしに、身体に力を込めた。
低血圧の身体はなかなか言うことをきいてくれないが、鞭を打ち続ければ何とか、芯が通ってくる。
「くそ……、いったい何時だと思ってる……?」
端からこうなる予感はしていたのだ。
あの男は横暴なようで、時折ひどくやさしい。
ひたすら粘着質なようで、あきらめ手放すのも、人一倍早い。
己の深すぎる業に、できることなら誰も巻き込みたくないと思っている。
傷だらけの、やさしい獣。
伸ばした爪で他者を傷つけないよう、ひたすら己の身体に爪を立て、掻きむしり、血溜まりの中で息を殺し、耐えている。
せめて、その孤独を分かち合える存在を与えてやりたいと、ただひたすらに新たな犠牲者を増やす自分の罪深さを嘲笑う。
だが、どうしようもないのだ。
自分がいくらリューと共に在ることを望んでも、リューが求めるのは、自分ではない……。
拒まれたら、理解のある友人を演じる他なかった。
彼の種族は生涯、番を変えないと聞く。
番を与えてやりたいと願いながら、他方では永遠に孤独を抱え、彷徨い続けて欲しいと祈る自分がいる。
誰のものにも、なって欲しくない。
永遠に飛び立たないでくれ。
年を重ねることのないリューが同じ土地で過ごせる期間は、そう長くはない。
せいぜい、10年……。
自分にとっては長い年月も、リューにとってはあっという間だ。
それこそ、塵芥にも等しい。
いい加減、覚悟を決めるべきだ。
自分も……リューも。
この機を逃したら、次が現れる保証など、どこにもないのだから。
……ボーズ、オトコなら、泣くンじゃねェ。
不意に、幼い日の記憶が蘇る。
かけられた声の魅惑的な響きに、一瞬にして恋に堕ちた。
目を瞑れば今でも鮮やかに、すべてを思い描くことができる。
あれは、そう……、もう20年も前の話だ。
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